勉強しようNTTのBlog - 2012

算数の問題と解答とを考えていきます。




2012年07月10日(Tue)▲ページの先頭へ
バウムクーヘン積分と2重積分
大学への数学V&Cの勉強
積分の応用

【解説】
 バウムクーヘン積分により、立体の体積を計算する積分技術が教えられています。
 しかし、インターネットで検索すると、その手法で問題を解くと減点されると注意がされているようです。

例えば、以下のようにバウムクーヘン積分の式が与えられることを示す問題が東大の入試問題に出されたことがあるので、バウムクーヘン積分を当たり前の式として使ってはいけないと言う意見がありました。

【問題】
f(x)=πxsin(πx)とする。
y=f(x)のグラフの0≦x≦1の部分とx軸とで囲まれた図形をy軸のまわりに回転させてできる立体の体積Vは
で与えられることを示し、この値を求めよ。
(問題おわり)

 バウムクーヘン積分に言及して問題を解いても、そのバウムクーヘン積分を表現する数学の言葉記述されないので、バウムクーヘン積分の概念を用いた解答が軽視されることもあるらしいです。
 バウムクーヘン積分をあらわす数学の言葉(タブー?)は、
「2重積分」です。

 2重積分は大学生以上では常識なので、それほど強いタブー(禁じ手)では無く、高校生が一旦2重積分を覚えてしまえば、それを高校の試験問題で使っても、また、大学の入学試験で使っても、合格点をもらえると思います。
 そのため、以下では、バウムクーヘン積分の計算を、大学生以上では常識になっている数学の言葉「2重積分」を使って計算する解答例(このように書けば合格点をもらえると思う)を示します。
 先に例示した東大の入試問題の前半部分に、2重積分を使って解答してみます。

(解答はじめ) 
  求める立体の断面を上図に示す。y=f(x)のグラフの0≦x≦1の部分とx軸とで囲まれた領域を、縦方向と横方向の細かい格子に分割する。その格子で分割された1単位を微小領域@とする。
 求める立体は、微小領域@をy軸のまわりに1回転して得られる細いドーナツ状の立体ΔVを集合させた立体である。
細いドーナツ状の立体ΔVの体積をΔVとすると、
ΔV=(2π・x)(ΔxΔy)
である。
 微小領域@を断面に持つ細いドーナツ状の立体ΔVを縦方向と横方向につないで、その断面がy=f(x)のグラフの0≦x≦1の部分とx軸とで囲まれた領域を埋めるように集合させる。
その集合の体積Vは、
以下の式のように、細いドーナツ状の立体ΔVの体積を、 一定のxについてy方向に積分した上で、
更にx方向に積分する2重積分で計算できる。
  (解答おわり)

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2012年07月08日(Sun)▲ページの先頭へ
傘形積分と2重積分
大学への数学V&Cの勉強
積分の応用


【解説】
 傘形積分により、軸の回りに平面図形を回転させた立体の体積を計算する高度な積分技術が教えられています。
 しかし、インターネットで検索すると、その手法で問題を解くと減点されると注意がされているようです。

 傘形積分を勉強することはほめられるべきことと考えますが、現実には、その知識が試験問題の解答ではマイナス?になってしまうようです。
 傘形積分に言及して問題を解いても、その傘形積分を表現する数学の言葉が教えられず。傘形積分の手法が数学の言葉で記述されないので、傘形積分の概念を用いた解答が理解されないというのがこのマイナス問題の原因のようです。
 傘形積分をあらわす数学の言葉は、高校生には教えないことにしているタブーの一種と考えられます。
 傘形積分を表現する数学の言葉(タブー?)は、「2重積分」です。

 2重積分は大学生以上では常識なので、それほど強いタブー(禁じ手)では無く、高校生が一旦2重積分を覚えてしまえば、それを高校の試験問題で使っても、また、大学の入学試験で使っても、合格点をもらえると思います。
 そのため、以下では、傘形積分の計算を、大学生以上では常識になっている数学の言葉「2重積分」を使って計算する解答例(このように書けば合格点をもらえると思う)を示します。

【例題】
 放物線y=xと直線y=xとで囲まれた図形を、直線y=xのまわりに1回転して得られる立体の体積を求めよ。

(解答はじめ)

 求める立体の断面を上図に示す。放物線y=xと直線y=xとで囲まれた領域を、縦方向と横方向の細かい格子に分割する。その格子で分割された1単位を微小領域@とする。
 求める立体は、微小領域@を直線y=xのまわりに1回転して得られる細いドーナツ状の立体(下図)を集合させた立体である。

 微小領域@を断面に持つ細いドーナツ状の立体を縦方向と横方向につないで、その断面が放物線y=xと直線y=xとで囲まれた領域を埋めるように集合させる。その集合の体積Vは、以下の式のように縦方向に積分した結果を更に横方向に積分する式(2重積分の式)であらわせる。

(2重積分とは)
 2重積分とは、1回目の積分変数で計算した後に2回目の積分変数で計算する積分です。すなわち、1回目の積分計算の結果が2回目の積分計算で使われます(以下の最初の式のような形であらわされます)。2重積分では、1回目の積分で幅dxのy方向の細長い範囲を積分し、その積分範囲を2回目の積分で変数xの微小量のdxだけずらしつつ積分することで全領域を過不足無く網羅して積分するようにします。そのために、1回目の変数yによる積分計算では、2回目の積分変数xを一定値に保って計算します。いわば、以下の最初の式では、括弧の右側の外に付けたdxが、括弧の中の式をxを変えないように金縛りにかけています。

(積分の下限と上限については、高校生の間は、問題を難しくしないために、xもyも、小さい値から大きい値まで積分する場合だけを考える)
次に、括弧の中のyによる積分を 、r による積分に変換する。
その変換の際に、微小量dyをdrに変換する際に掛け算するべき係数を求める必要がある。
 その括弧中でのyによる積分では、xの値を一定の値に固定して積分計算している。そのため、rによる積分に変換する場合でも、xの値を一定に保ちつつ r で積分する。
 よって、以下で、xを一定に保つ条件を守ってyが微小量dy変化する場合の、xを一定に保つ条件を守って半径 r が変化する微小量drを計算する。
|r|=|ax+ay|
であるので、
|dr|=|(ax+a(y+dy))−(ax+ay)|
    = |a・dy|
になる。それゆえ、
|dy|=|dr/a
の関係がある。よって、
 |dy|は|dr/a
に置き換えて積分することができる。
 (高校生の間は、問題を難しくしないために、rについての積分についても、rが小さい値から大きい値まで積分する場合だけを考える。この積分では、yが増すとrが減るので、rの積分範囲は、yが最大になった場合のrの値=0からrまでrで積分する。)

さらに計算を続けます。
   
(この計算の意味の説明)
 (以下の説明文と図とは解答用紙に書かないでも良いです)
 ここまでの計算は、微小領域@を回転させた立体をy方向に積み重ねた立体の体積を計算しています。すなわち、以下のような形の薄い傘の体積を計算しています。


(傘を軸を中心にバウムクーヘン積分すると、円板の体積になる)

 ここで、2重積分のパラメータ変換によって、
|dy|=|dr/a
という関係があり、yによる積分を r による積分に変える、積分のパラメータを変換する場合に出てくる係数(1/a)が得られます。この係数を用いて、厚さdxの傘の体積が、厚さ dx・|1/a|の円板に等しくなる、という関係があります。
このパラメータを変換する際に現れる係数(1/a)は傘形積分において非常に重要です。
 2重積分の計算において、この係数を間違えたら、計算手順の点数がもらえないと思います。傘形積分の概念だけを用いて計算する際にも、この係数を間違えたら、計算手順の点数がもらえないと思います。


さらに、計算を続けます。


 (解答おわり)

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2012年05月25日(Fri)▲ページの先頭へ
行列の交換子の2乗は単位行列に比例


大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】 
行列Awuukと行列Bwuukとは等しくない場合が多いですが、
行列Aの行列式が0では無い場合は、

−1km(Amuus)=Bks=(Bkmmu)A−1us
が成り立ちます。
このようにある行列CとDが、
行列式が0では無い行列Pを介して、
PC=DP
という関係がある場合は、
行列CとDとは同じ固有値を持ち、行列Pによって互いに変換されます。
PCP−1=D
−1DP=C
そのため、 行列Awuukと行列Bwuukとは同じ固有値を持ち、行列A−1kmによって互いに変換されます。

また 、行列Awuukと行列Bwuukは同じ固有値を持つので、固有値の和をあらわす行列の対角成分の和も同じになります。
つまり、
tr(AB)=tr(BA)
です。
この関係は、アインシュタインの縮約記法であらわすと簡単に証明できます。
tr(AB)=muumummutr(BA)
です。

更に、行列AやBの行列式が0になる場合でも、
以下のようにして、
行列AB≡Fと、BA≡Gの固有値が等しいといえます。
行列Fの固有値λを求める式は、
det(F−λE)=0
(F11−λ) (F22−λ)−2112=0
λ−tr(F)λ+det(F)=0
ここで、
tr(F)=tr(AB)=tr(BA)=tr(G)
det(F)=det(AB)=det(A)det(B)=det(BA)=det(G)
λ−tr(G)λ+det(G)=0
だから、行列FとGは、固有値を求める式が同じになるから固有値が同じです。

この関係があるため、
交換子(AB−BA)≡Cの対角成分の和は0になります。
tr(AB−BA)=tr(AB)−tr(BA)=0
tr(C)=0
このため、2行2列の行列の交換子(AB−BA)≡Cの場合は、
2行2列の行列のケイリー・ハミルトンの定理によって、 
wuuk+det(C)wk=tr(C)wk
の関係に、 tr(C)=0を代入すると、
wuuk+det(C)wkwk
wuuk=−det(C)wk
すなわち、 行列の交換子(AB−BA)≡Cを2乗した行列は単位行列に比例し、詳しくは−det(C)倍になります。

【問題】
2行2列の行列AとBが
AB−BA=A
をみたすとき、
wuuk=Owk
が成立することを示せ。

「入試数学伝説の良門100」 
の問題96の、308ページ「別解」

(解答はじめ)
tr(A)=tr(AB−BA)=tr(AB)−tr(BA)=0 (1)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理によって、
wuuk+det(A)Ewk=tr(A)Awk
(1)を代入する。
wuuk=−det(A)Ewk   (2)
A(AB−BA)=A(A)
(AB−BA)A=(A)A
(AB−ABA)+(ABA−BA)=2A
B−BA=2A
(2)を代入する。
−det(A)B+det(A)B=2A
−det(A)(B−B)=2A
wk=2Awuuk
∴ Awuuk=Owk
(解答おわり)


(別解:地道に計算する方法)
行列の要素を添え字を付けてあらわすと、式がスラスラかける。


(解答はじめ)
(AB−BA)wk=Awk
wuuk−Bwuuk=Awk 

111111122111111221
1112211221  (1)
222112222221122222
2221122112  (2)
121112122211121222 (3)
212111222121112221 (4)
(1)と(2)より、
1112211221−A22  (5)
(5)を(3)に代入して22を消去する。
12111212221112+B1211 (6)
12(1−B2211)=2A1112  (7)
(5)を(4)に代入して22を消去する。
212111112121112221 (8)
21(1−1122)=2A1121 (9)
(7)×21+(9)×12
21122A11(A2112−A1221) (10)
(10)に(5)を代入する
2112−2A1111
2112−A1111  (11)

次に、Awuukの要素を順次に計算する。
1uu111111221
(11)を代入して
1uu1=0  (12)

2uu221122222
(11)と(5)を代入して
2uu2=0  (13)


1uu211121222121122
(5)を代入して
1uu2=0  (14)

2uu121112221211122
(5)を代入して
2uu1=0  (15)

∴ (12)(13)(14)(15)から
wuukwk
(解答おわり)





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追加講:三角形の面積と行列式
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2012年04月29日(Sun)▲ページの先頭へ
2つの行列の2つの積から元の行列を逆算する


大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】
(1)対角行列Tと行列の積が交換可能な行列は対角行列です。
(2)行列Aと行列Bの積ABとBAとは、同じ固有値を共有する行列です。

(3)また、行列式が0では無い行列で、その固有値の値が重解を持たない行列Aは、その固有値毎に固有ベクトルを計算して、
 その固有ベクトルを並べた行列Ptkを用いて以下の式で計算することで、対角化した行列Cukに変換できます。
−1ussttk=Cuk   ←Asttk=Psuuk
また、行列Pを用いてそのようにお互いに変換できる行列同士は、同じ固有値を持ちます。
これらの原理を利用して、以下の問題を解くことができます。

【問題】
行列Aと行列Bがあるとき、
行列の積AB=CとBA=Dとが与えられた場合に、元の行列AとBを求める問題を考えます。
この問題では、行列は全て2行2列の行列であるものとします。

(条件1)この行列AとBは、その行列式が0では無く逆行列が存在するものとします。

 この行列の積AB=CとBA=Dは以下のように、行列A(あるいは行列B)を用いて互いに変換できます。
行列AB=Cと行列BA=Dは、行列Aを用いて互いに変換できるので、同じ固有値を持ちます。
 行列AB=Cと行列BA=Dは固有値が共通であるので、この行列AB=Cと行列BA=Dのバラエティを記述するパラメータの数は、行列Aの4つのパラメータと行列Bの4つのパラメータの合計の8よりも2つパラメータが減って、6つのパラメータでCとDとのあらゆる場合が記述できます。
 パラメータが減ってしまっているので、行列CとDだけでは情報が不足しているので、それだけでは、行列AとBを完全に再現することはできません。行列CとDのみからでは、行列AとBがパラメータの自由度2で不定になります。
 以下では、その不定性があっても良いものとして、行列AとBを可能な限り逆算してみます。


以下の行列式を計算することで、行列AB=Cと行列BA=Dとが共有する固有値と、その固有値を持つ対角行列Tを計算することができます。
そして、以下のように、その固有値を持つ対角行列Tを行列Cに変換する行列Pを計算、対角行列Tを行列Dに変換する行列Qを計算します。






以下で、式4から行列Aを与える式6を計算し、式5から行列Aを与える式7を計算し、式6と式7を連立して行列Aを消去する計算をします。
ここで、行列Q−1BP=Vとします。
この行列Vと対角行列Tとは、その積が交換可能な関係があります。
対角行列Tと積が交換可能な行列Vは対角行列になります。
 上式8のように、行列Bが対角行列Vを用いてあらわせます。

同様にして、 式4から行列Bを与える式9を計算し、式5から行列Bを与える式10を計算し、式9と式10を連立して行列Bを消去する計算をします。
ここで、行列P−1AQ=Wとします。
この行列Wと対角行列Tとは、その積が交換可能な関係があります。
対角行列Tと積が交換可能な行列Wは対角行列になります。
そして、以下の式11のように、行列Aが対角行列Wを用いてあらわせます。
 この式8と式11を用いて行列の積AB=Cを計算すると、以下の関係式12を得ます。
すなわち、式12のように、対角行列Tは対角行列WとVの積です。また、対角行列同士の積は交換可能です。
ここで、行列の積BA=Dを計算すると、式5の関係が満足されています。
 対角行列VとWには、それ以上の制限条件がありません。
すなわち、任意の対角行列Vを自由に定めて、式12を満足するように対角行列Wを定めれば、それだけで、AB=Cを与える式4と、BA=Dを与える式5が満足されます。

(解答)任意な対角行列Vと、式12を満足する対角行列Wを用いて、式11で行列Aが与えられ、式8で行列Bが与えられる。

【検算】
 任意の対角行列Vを用いて行列AとBが与えられるということが、本当に間違いなく成り立っているかを確かめるために、以下の検算をします。

検算のために、行列AとBが以下の場合を考える。
 この場合に、行列AB=CとBA=Dの固有値を以下の様に計算すると、行列CとDの固有値が同じであることが確認できます。
これで対角行列Tが定まりました。

次に、行列AB=Cを対角行列Tに変換する行列Pを計算します。
次に、行列BA=Dを対角行列Tに変換する行列Qを計算します。
次に、対角行列WとVを自由に変えて(ただし式12を満足させて)、それにより定まるAとBが、どれも同じ行列AB=CとBA=Dを与えるかどうかを確認します。

(第1の場合)
先ず、対角行列WとVを以下のように定めて行列AとBを計算します。
 この行列AとBは、元の行列AとBとは異なる。
次に、この行列AとBの積AB=CとBA=Dを計算する。
 行列AB=CとBA=Dは元どおりになった。


(第2の場合)
次に、対角行列WとVを以下のように定めて行列AとBを計算します。
 この行列AとBは元の行列と同じ行列が得られた。

(第3の場合)
次に、対角行列WとVを以下のように定めて行列AとBを計算します。
 この行列AとBは、元の行列AとBとは異なる。
次に、この行列AとBの積AB=CとBA=Dを計算する。
 行列AB=CとBA=Dは元どおりになった。

以上で、両者の積が対角行列Tになる任意の対角行列VとWを設定することで、異なる行列AとBの組が得られ、そのいずれの行列AとBの組も、同じ行列の積AB=CとBA=Dを与えることが確かめられた。




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2012年04月25日(Wed)▲ページの先頭へ
2つの対角行列とある行列の積の交換の定理
 
 
大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式


以下のように、1つ目の対角行列Bと、ある行列Aの積の行列と、積が交換された、その行列Aと2つ目の対角行列Cの積の行列が等しいという条件が与えられているとする。
この式を計算すると以下の式になる。
この場合に、これらの行列の要素が以下の様に特定の値に制限される。
この関係を、仮に、
「2つの対角行列とある行列の積の交換の定理」
と名づける。
 行列の問題を解く際に、この定理の条件を与える式が得られたら、その式の解は、以下のように解けることを覚えておくと便利だと思う。

(解の解説)
上の行列の方程式から、以下の関係が得られる。
この解1以外の解については、以下のように、式1から式4により変数が等しくされる関係を図に書いて考える。

(解8)行列Aが0行列であって、対角行列BとCは任意の行列であるという自明な解もある。

 この問題では、以上のように、8個の場合分けされた解が得られる。
 これらの解の特徴は、行列Aが自由に設定できる場合は(解1)の場合だけで、その条件は、行列B=C=単位行列の定数倍のときである。
 行列B=C=単位行列の定数倍という条件が無い場合には、行列Aの少なくとも2つの要素が0になる。

(補足)
この問題の一部として、以下の場合が重要です。
すなわち、以下のように、単位行列の定数倍以外の対角行列Tと交換可能な行列Aを考える。
TA=AT

この行列の解は、上の解7であって、次の式のように行列Aも対角行列になります。
 このように、単位行列の倍数以外の対角行列と積が交換可能な行列は、対角行列のみです。
 このことは、積が交換可能な行列は、その固有ベクトル(の方向)が同じであるという原理に結びついています。単位行列の倍数以外の対角行列の固有ベクトルは(1,0)と(0,1)だからです。
 ちなみに、2行2列の行列に限っては、行列Tと交換可能な行列は、単位行列Eを用いて、cT+dEであらわせます。Tが対角行列の場合、cT+dEは対角行列になるから、対角行列Tと交換可能な行列は対角行列であると言えます。しかし、その話は2行2列の行列に限って成り立つ話です。一方、交換可能な行列は固有ベクトルが同じという原理は、n行n列の行列全てで成り立ちます。

 
 



2012年04月22日(Sun)▲ページの先頭へ
対角行列と回転行列の積の交換の定理


大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

以下のように、対角行列と回転行列の積の行列と、積が交換された、回転行列と対角行列の積の行列が等しいという条件が与えられているとする。
この式を計算すると以下の式になる。
この場合に、これらの行列の要素が以下の様に特定の値に制限される。
この関係を、仮に、
「対角行列と回転行列の積の交換の定理」
と名づける。
 行列の問題を解く際に、この定理の条件を与える式が得られたら、その式の解は、以下のように解けることを覚えておくと便利だと思う。
 あるいは、この形の問題は以下の様に多くの解(選択肢)を持つという知識だけでも有用と思う。
 上の行列の方程式から、以下の関係が得られる。








(解7)回転行列以外の行列が0行列であって、回転行列は任意の行列であるという自明な解もある。
 この問題では、以上のように、13個の場合分けされた解が得られる。


(補足)
 この解のうちで、解1−1は、α=θであって、
(回転行列θ)(単位行列Eの定数倍)=(単位行列Eの定数倍)(回転行列θ)
の形をしています。

 実は、 回転行列と積が交換される行列Aについては、すなわち、
(回転行列θ)(行列A)=(行列A)(回転行列θ)
を満足する行列Aは、
(単位行列を含む)回転行列(の定数倍)だけです。
 後に学ぶことですが、積が交換可能な行列は、「固有ベクトル」を共有する行列のみであり、回転行列は共通する固有ベクトルを持つからです。




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2012年04月10日(Tue)▲ページの先頭へ
円は円に変換し特定の直線は無限遠に移動させる変換

大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】
双曲線を円に変換するのと同様にして、
円を円に変換し特定の直線は無限遠に移動させる変換を考える。
そして、その変換を利用して、下図で示す、
「点A(極)に対する極線PQ上の点Bを極にした極線RSは、点Aを通る。」
という定理を証明する。

(証明開始)
上の図の円は円のままに変換し、

直線 X=2 は、無限遠に移動させる変換を考える。
この円の式を以下のように、直線の式(X−2)=0の左辺を分母にする式に変形する。
 上の式のように、あるパラメータkとaを用いて式を変形し、
次に、その式の変形が恒等式になるようにパラメータkとaを定める。
 上の計算により、
パラメータ a=−1/2に定まり、
 パラメータ k=2/3に定まった。
このパラメータを代入して、式の変形を続ける。


上の計算で得られたX’とY’とに変換する場合は、
半径1の円は同じ半径1の円に変換される。
一方、
直線 X=2
の上の全ての点は、無限遠に移動させられる。
それ以外の直線は、以下の計算でわかるように、直線は、折り曲げられずに、直線に変換される。


その計算をする準備として、座標XおよびYを、X’とY’であらわす以下の式を計算する。
先ず、座標Xは以下のように計算する。

次に、座標Yは、以下のように計算する。

この座標XとYであらわした直線は、以下のように計算すると、
座標X’とY’でも、直線になる。

 上の結果が示すように座標X’と座標Y’でも直線になる。
すなわち、最初に示した円と直線とであらわされた図形は、以下の図形に変換される。

この図形で成り立つ円と直線の関係は、最初の図形でも成り立つ。
この図形では、直線mと直線nが無限遠点A’で交わる。
(「平行線は無限遠点で交差する」という、射影幾何学の公理系に従う)


すなわち、無限遠点A’を通り円に接する接線mとnは互いに平行な線である。

次に、直線R’S’も無限遠点A’を通ることを証明するために、
直線R’S’が接線m及びnと平行であることを証明する。
接線mと円との接点をP’とし、
接線nと円との接点をQ’とする。
その点P’とQ’とを結んだ直線は、円の中心点Oを通り、直線m及び直線nに垂直な直線である。
直線P’Q’上の点B’から円に2本の接線を引き、それぞれの接線と円との接点をR’とS’とする。
そうすると、
直角三角形△B’OR’と△B’OS’とでは、
斜辺B’Oが 共通であり、
1辺OR’=OS’であるので、
△B’OR’≡△B’OS’
∴ ∠B’OR’=∠B’OS’
つまり、直線P’Q’=直線OTは、
二等辺三角形△OR’S’の頂角∠Oを二等分する。
また、△OR’S’の
∠R’=∠S’
であり、
∠R’+∠S’+∠O=π
であるので、
△OR’Tの
∠T=π−∠R’−(∠O/2)
=π−∠R’−(π−2∠R’)/2
=π/2
∴直線OT=直線P’Q’は直線R’S’に垂直である。
そのため直線R’S’は直線m及び直線nに平行である。

そのため、直線R’S’は直線m及び直線nと無限遠点A’で交わる。
(ここで、「平行な直線の束は同じ無限遠点1つで交わる」という射影幾何学の公理系に従って考えた)


無限遠点A’は、最初の円の図形の点Aを移動した位置である。
よって、
最初の図形においても、
直線RSは、点Aを通る。
(証明おわり)

(補足)
なお、射影幾何学は、通常の点(X,Y)をあらわす射影座標(kX,kY,k)と、
無限遠点をあらわす射影座標(α,β,0)とを用いて、
それらの点の間の変換を研究する幾何学です。
射影幾何学では、上の計算で、方程式の分母に置いた式は射影座標の3番目の座標に置いて計算します。
そうすると、上の座標変換の式が以下の行列であらわせます。

詳しくは射影幾何学の専門書を参照してください。


射影幾何学と数学者の夢について良い記事のブログがあったので紹介します。
「算数オリンピックの長尾賞」(小島寛之先生)
 若き天才数学者の人生と、「その若者に射影幾何学を教えた回顧」の話が感動的です。 
癌に侵された死の宣告を受けつつ数学の世界に慰めを見出して充実した生を全うし31歳で亡くなった数学者の物語です。



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極と極線の関係の定理の証明
放物線における極と極線の関係
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2012年04月09日(Mon)▲ページの先頭へ
双曲線を円にする変換(その2)


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行列と連立1次方程式

【解説】
双曲線は以下のようにして円に変換できます。
(これは、1次変換ではありませんが、便利な変換です。)

このように(X,Y)座標を(X’,Y’)座標に変換すると、双曲線が円に変換されて、(X’,Y’)は円を描きます。
この座標変換の性質を以下のように調べると、以下のように、この座標変換は、直線は曲げずに直線のままに変換することがわかります。
このように、この変換は双曲線を円に変換し、直線は直線のままにします。
また、この変換の逆変換は、円を双曲線に戻すとともに、直線は直線のままに変換します。
そのため、円で成り立っていた以下の図の定理が、
円が双曲線に変換されるので、
双曲線でも成り立つことがわかります。
上の図の定理とは、
「点A(極)に対する極線PQ上の点Bを極にした極線RBは、点Aを通る。」
という定理です。
点A(極)に対する極線とは、点Aから円に引いた2つの接線による接点を結ぶ直線のことを極線と呼びます。
(この定理の証明は、ここをクリックしてジャンプする)




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2012年04月08日(Sun)▲ページの先頭へ
変換するベクトルを指定した場合の変換行列


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行列と連立1次方程式

【解説】
変換するベクトルを以下のように指定した場合を考える。
このように、任意の2つのベクトルを他の任意の2つのベクトルに変換する変換が定められた場合に、その変換をあらわす変換行列を計算する。
変換の元になるベクトルを一旦、基本的な単位ベクトルに変換する。
次に、その基本ベクトルを変換先のベクトルに変換する。
ここで、変換の元になるベクトルを基本ベクトルに変換する変換行列は、
その変換の元になるベクトルが基本ベクトルから変換されることをあらわす行列(その行列は以下のようにすぐわかる)の逆行f列を計算することで計算できる。
逆行列は余因子行列を計算することで計算できる。
こうして得た逆行列に、以下のように、基本ベクトルを変換先のベクトルに変換する行列を掛け算する。こうして、任意の変換元のベクトルを任意の変換先のベクトルに変換する場合の、その変換をあらわす変換行列が計算できる。






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2012年04月05日(Thu)▲ページの先頭へ
双曲線を円に1次変換する


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行列と連立1次方程式

【解説】

−X=1 (1)
+(i・X)=1 (2)
すなわち、以下のように1次変換することで双曲線を円に変換できる。
Y’=Y (3)
X’=i・X (4)
Y’+X’=1 (5)
この変換により、直線
Y=2 (6)
は、同じ式に変換される。
Y’=2 (7)
その直線が双曲線と交わる2つの交点で双曲線に2つの接線を引いたとき、
その2つの接線同士が交わる点(極)

(0,1/2)
も同じ点に変換される。
しかし、式7の直線と式5の円とは交わらない。
式6の直線と式1の双曲線は交わったのに。


この矛盾は、以下のように考えれば解消する。
式7の直線と式5の円は、
複素数座標の点
(i・√3,2)
で、交わる。
式5の円は、X’の虚数座標(とY’の実数座標)では
双曲線の形をしている。




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2012年04月01日(Sun)▲ページの先頭へ
楕円を円に1次変換する(その2)


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行列と連立1次方程式


【解説】


上図のように、回転した楕円の位置座標(X,Y)を行列Aksにより(X’,Y’)に一次変換して楕円を円に変形する問題の続きを考える。

【総合解答の復習】
先の計算を復習する。
全ての Atmの解は以下のように計算できた。
bX+2dXY+cY=1 (1)

以下の形のX、Yに関する恒等式を組み立てる。
bX+2dXY+cY=(fX+gY)+(hX+kY) (2)
X’=fX+gY
Y’=hX+kY

上の恒等式2を組み立てると、最初の式1は以下の式3に書き換えることができる。
X’+Y’=1 (3)
以下では、先の式2が恒等式になるために必要なf,g,h,kの条件を求める。
+h=b (4)
+k=c (5)
2fg+2hk=2d (6)
必要な条件は以上の式4から6である。


式4から式6の連立方程式を解く。
f=(√b)cosα (7)
h=(√b)sinα (8)
g=(√c)sinβ (9)
k=(√c)cosβ (10)
上のように式7から式10でf,g,h,kを定めると、式4と式5が成り立つ。
式6に式7から式10を代入し、2で割ると以下の式を得る。
(√(bc)){cosα・sinβ+sinα・cosβ}=d
sin(α+β)=d/(√(bc)) (11)
ここで、
α+β=θ (12)
とおいて、式11を書き換えると、
sin(θ)=d/(√(bc)) (13)
この式13により、θが定まる。
任意のαと、固定した値のθとで、f,g,h,k全てがあらわされる。

式7から式10は以下の行列の式であらわされる。

また、その行列の余因子行列及び逆行列は以下の式になる。



【回転した楕円の軸ベクトルを計算する】
 このように、楕円を描くベクトルを変換行列で円に変換できることがわかった。その変換行列のうち、以下のような特別な変換行列を求めて、それにより楕円の軸ベクトルを計算する問題を考える。
 楕円を円に変換する変換行列の逆行列は、円を楕円に変換する。その円を楕円に変換する変換が、円を描くベクトルを、X軸方向とY軸方向で縮尺を変えて拡大・縮小して楕円を描かせ、そのベクトルを角度γで回転させる変換であるものとする。
 そうして描かれた楕円をその操作を逆にして元の円に戻す変換の行列を計算する。


 式7から式13で定められる、楕円を円に変換する行列のうち、そのような条件を満足する変換の行列を計算する問題です。


(基本的解析方法)
 この変換の逆変換によりを楕円に変換する式を計算して、その回転角度γに由来して楕円をあらわす方程式を計算して、その方程式の形とその楕円の回転角度との関係を計算する、のが一番良い解決方法と考える。


(別解その1)
 その基本的解析方法は既に解説した。そのため、ここでは、その基本的解析結果の楕円の式からの情報を得ずに、楕円の式を円に変換する式を計算するのみの操作によって、そのように回転した楕円の軸のベクトルを計算することを考える。
 その別解は、楕円の式から固有ベクトルを計算することが、良い解析方法と考える。

(別解その2)
 固有ベクトルを計算する方法も既に解説したので、ここでは、固有ベクトルという便利な概念を使わずに、 楕円の式を円に変換する式を計算するのみの操作によって、そのように回転した楕円の軸のベクトルを計算する。
 すなわち、楕円を円に変換する変換を逆にして、円を楕円に変換する変換が:
(1)円を描くベクトルを、X軸方向とY軸方向で縮尺を変えて拡大・縮小して楕円を描かせる。
(2)そのベクトルを角度γで回転させる変換。
という変換である特別な変換をあらわす行列を計算する。



 このアイデアは、一見すると、楕円の軸ベクトルを計算する方針が明確であり、軸ベクトルを計算するのに良い方法のように見えるかもしれない。
 しかし、正しく方程式を設定しても、それで問題を解き始めたら、解き方が難しい問題になった。
 そのため、以下では、この問題を解き易くする計算技術を解説します。

【問題の条件の変換をあらわす方程式を求める】

変換行列Aの逆行列A−1は余因子行列に比例する。
その逆行列A−1が、
(1)円を描くベクトルを、X軸方向とY軸方向で縮尺を変えて拡大・縮小して楕円を描かせる。
(2)そのベクトルを角度γで回転させる。
という変換であるための条件は以下のように計算できる。

 すなわち、その行列A−1の列ベクトル同士が直交して、内積が0になることが、求める条件である。
一方、先の計算の結果、 楕円を円に変換する行列の満たすべき条件が、式7から式13で得られている。
それらは以下の式であらわされる。


この式に、逆行列A−1の列ベクトル同士が直交して、内積が0になる条件を加えることで、問題を解くための連立方程式が完備し、以下の式になった。
しかし、これらの方程式を連立して解く問題は難しそうに思う。
そのため、少し遠回りになるかもしれないが、
未知数γとsとtを追加して、問題を以下のようにあらわす。 

 ここで、 γは、楕円の軸の回転角度をあらわす、問題が求める目的のパラメータを直接にあらわすものである。
なお、以上の式でパラメータk,h,g,fは、式を区別する記号として利用することにし、その値を計算する未知数としては扱わないことにする。

 以上の4つの式であらわすことで、ベクトルの内積が0になる条件式は既に組み込まれている。
そのため、問題が、上の4つの式に、sinθが定数になる式を加えた連立方程式を解く問題に変わった。すなわち、問題が、未知数γとsとtを求める問題に変換された。

これらの未知数の間の関係を以下のように計算する。




以上により角度γが求められた。

以上によりパラメータtとsが求められた。
蛇足だが、もう少しsとtを調べる。
式14と式15から、

この結果を用いて変換行列Aをあらわすと、以下のようになる。
(sとtについては、表示を見易くするために、その計算結果は代入しないで、そのままsとtであらわす)

 この変換行列の逆行列(それに比例する余因子行列)は以下のように計算できる。
その列ベクトルが求める楕円の軸ベクトルをあらわす。 

 以上の通り、楕円の軸ベクトルを計算できた。

(計算の反省)
以上のようにして楕円の軸ベクトルを計算できた。
しかし、その計算には煩雑な計算を必要とした。

 楕円の軸ベクトルを計算する方法は、やはり、固有ベクトルを計算する方法が、より簡単に計算できる優れた方法であると考える。

【別解その2の別解】
総合解答の結果を利用せずに、以下のように直接に計算することもできる。
すなわち、変換行列Aに関する式
を元にして、以下のように計算を行なう。
以上で、変換行列を定めるパラメータsとtとγが求められた。
この計算の形は、固有値を求めて固有ベクトルを求める計算のパターンと良く似ていると思う。



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2012年03月20日(Tue)▲ページの先頭へ
楕円を円に一次変換する


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行列と連立1次方程式

【解説】


上図のように、回転した楕円の位置座標(X,Y)を行列Aksにより(X’,Y’)に一次変換して楕円を円に変形する問題を考える。

点(X,Y)の描く楕円の式は以下のように変形できる。


この式を以下のように、

とする一次変換の行列Aksを求める問題です。
この式は以下のように変形できます。

このような関係を満足する行列Aksを求める問題に帰着します。

この解は1つではありませんが、以下で、1つの解を計算する方法を説明します。また、別解として、より簡単に得られる解の計算方法を示します。

ここで、楕円の式を与える行列Fmpの固有値をαとαとする。楕円の式をあらわすとき、これらの固有値は正値である。
固有値αの固有ベクトルをPm1とし、
固有値αの固有ベクトルをPm2とする。
ここで、一旦、アインシュタインの縮約表記を止める。
以下の式が成り立つ。

(以下の公式を思い出して)


このように定義した行列Ampも解の1つとなり得ることを以下で証明する。
固有値が正値であるので、その平方根も実数で得られる。
その平方根は、正値以外に、負の値にしてもかまわないが、以下の計算では、正値の平方根で計算を進める。

ここで、ケイリーハミルトンの定理を利用して、この行列Ampが対称行列であることを証明する。

(補足)なお、対称行列Fmpの固有ベクトルは互いに直交するべクトルになることが知られている。そして、その場合は、固有ベクトルの作る座標変換の行列Pmkは回転行列になるように整えることができる。その場合は、その回転行列で変換して作られる行列Ampは対称行列になる。(n行n列の行列で同様な問題を扱う場合は、そのようにして、行列Ampが対称行列になることを証明する)

行列Ampが定義できたので、
以下では、アインシュタインの縮約表記に戻って、計算を進める。


こうして、回転した楕円を、その楕円の位置座標(X,Y)を以上の計算で求めた行列Aksを使って(X’,Y’)に一次変換すれば、その楕円を円に変形することができることがわかった。

【別解】

とおくと、

ここで、元の式で、b>0でなければならない。
そして、
(c−(d/b))>0であることが楕円の条件である。
(c−(d/b))<0の場合は、双曲線の標準形に1次変換される。
(c−(d/b))=0の場合は、2つの直線に1次変換される。
放物線に1次変換されるためには、元の式にXかYの1次の項がある必要がある。

よって、
11=√b
12=(d/√b)
21=0
22=√(c−(d/b))

ここで得られた行列を使って検算すると、たしかに以下の式が成り立っている。
tmtp=Fmp
tmの解のうち、この解が一番速く計算できる。

【総合解答】
上の別解を拡張して全てのAtmの解を計算する。
bX+2dXY+cY=1 (1)

以下の形のX、Yに関する恒等式を組み立てる。
bX+2dXY+cY=(fX+gY)+(hX+kY) (2)
X’=fX+gY
Y’=hX+kY

上の恒等式2を組み立てると、最初の式1は以下の式3に書き換えることができる。
X’+Y’=1 (3)
以下では、先の式2が恒等式になるために必要なf,g,h,kの条件を求める。
+h=b (4)
+k=c (5)
2fg+2hk=2d (6)
必要な条件は以上の式4から6である。

式4から式6の連立方程式を解く。
f=(√b)cosα (7)
h=(√b)sinα (8)
g=(√c)sinβ (9)
k=(√c)cosβ (10)

上のように式7から式10でf,g,h,kを定めると、式4と式5が成り立つ。
式6に式7から式10を代入し、2で割ると以下の式を得る。
(√(bc)){cosα・sinβ+sinα・cosβ}=d
sin(α+β)=d/(√(bc)) (11)
ここで、
α+β=θ (12)
とおいて、式11を書き換えると、
sin(θ)=d/(√(bc)) (13)
この式13により、θが定まる。
任意のαと、固定した値のθとで、f,g,h,k全てがあらわされる。
式12から、
β=θ−α
として、式9と10を書き換えると、
g=(√c)sin(θ−α) (14)
k=(√c)cos(θ−α) (15)
式13で定められるθと任意の値のパラメータαを用いて、式7,8、14、15で、変換の全てのパラメータf,g,h,kが定められる。

【対称行列となる解】
これで解答が得られたが、このうち、パラメータf、g、h、kで定まる変換行列が対称行列になる特別な場合を調べておく。
g=h=(√c)sin(θ−α)=(√b)sinα
sinα(−(√c)cosθ−(√b))+cosα((√c)sinθ)=0
1/tanα=((√c)cosθ+(√b))/((√c)sinθ)
cosθ≧0とする解は
1/tanα
=((√c)√(1−(d/(bc)))+(√b))/((√c)(d/(√(bc))))
=(√(c−(d/b))+(√b))/((d/(√b)))
=(√(bc−d)+b)/d
1/sinα=1+(1/tanα)
={d+(bc−d)+b+2b√(bc−d)}/d
={bc+b+2b√(bc−d)}/d
=b{c+b+2√(bc−d)}/d
=h=b・sinα=d/{c+b+2√(bc−d)}
=d/{c+b+2√(bc−d)}
bc−d=Δ とおくと、
=h=d/{c+b+2√(Δ)}
gとhがdと同じ符号を持つ解を求める。
g=h=d/√{c+b+2√(Δ)}
式1から、
f=h/tanα=(√(Δ)+b)/√{c+b+2√(Δ)}
式0から
fg+hk=d
(√(Δ)+b)d/{c+b+2√(Δ)}+dk/√{c+b+2√(Δ)}=d
(√(Δ)+b)/{c+b+2√(Δ)}+k/√{c+b+2√(Δ)}=1
(√(Δ)+b)/√{c+b+2√(Δ)}+k=√{c+b+2√(Δ)}
k={c+b+2√(Δ)−(√(Δ)+b)}/√{c+b+2√(Δ)}
={c+√(Δ)}/√{c+b+2√(Δ)}
以上で得た解を整理する。

ここで得たパラメータf,g=h,kから成る1次変換の対称行列Atmとパラメータb,c,dからなる対称行列Fmpとは、掛け算を計算してみると、演算順序を交換しても結果が変わりません。
これは、次のページで説明することですが、行列Atmと行列Fmpとは固有ベクトルを共有していることを意味します。
そのため、この行列Atmは、最初に考察した1つの解、その固有値が行列Fmpの固有値の平方根である対称行列の具体的な解になっています。

【対称行列となる変換行列Atmの簡単な計算方法】
パラメータf、g、h、kで定まる変換行列Atmが対称行列になる場合には、その行列の2乗が対称行列Fmpになることを利用して、もっと簡単に変換行列Atmを求めることができます。その計算方法を以下で説明します。
tmmk=Ftk (1)
この場合、行列Ftkの行列式
bc−d=Δ
とおくと、
行列Atmの行列式=±√Δ
になります。このうち、行列式が√Δとなる解のみを求める。
行列Atmに関するケイリー・ハミルトンの定理は以下の式になります。
tmmk−(A11+A22)Atk+(√Δ)Etk=0tk (2)
式2に式1を代入すると、
tk−(A11+A22)Atk+(√Δ)Etk=0tk
(A11+A22)Atk=Ftk+(√Δ)Etk (3)
この行列の対角要素の和を計算する。
(A11+A22=F11+F22+2(√Δ)
(A11+A22)=√{F11+F22+2(√Δ)}=√{b+c+2(√Δ)}
これを式3に代入する。




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反交換関係


反交換関係
【解説】
通常の数の演算の場合は、
a×b=b×a
という式が自明です。
しかし、この”演算”のルールそのものを変えた演算の関係も考えることができます。
a×b=−b×a  (1)
という関係の演算も考えることができます。
ここで、マイナスの数が定義されているということは、
掛け算だけではなく、足し算も定義されていて、
c+(a×b)=c−(b×a)  (2)
なる関係になるということです。

これは、aとbが通常の数では無く、ベクトルであるものとして、演算としてベクトルの外積を考える場合の演算ルールなどが該当します。
また、通常の数に対して、演算がそういうものであるものとして、新しい演算を定義することでも、この関係の演算を定義できます。
そういうルールの演算の場合は、全ての演算を最初から新ルールによって見直さなければなりません。
そもそも、その演算では、
a×a=−a×a=0
になってしまいます。

この新しい演算の下に、式1の関係がある場合に、この式1の関係を反交換可能な関係と呼びます。

また、演算の反交換関係を以下のように場合分けして定義することもできます。
a≠bのとき、
a×b=−b×a
a=bのとき、
a×a=a≠0

同様に、演算の交換関係も、以下のように場合分けして定義することもできます。
a≠bのとき、
(a×b)−(b×a)≠0
a=bのとき、
(a×a)−(a×a)=0

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2012年03月15日(Thu)▲ページの先頭へ
固有ベクトルが同じ行列


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行列と連立1次方程式

【解説】
固有値はどうであれ、固有ベクトルが同じ2つの行列を考えます。
特に、n行n列の行列ならn個の共通する固有ベクトル
t1
t2
・・・
tn
が存在する”正常な”行列AstとBstを考えます。
それらのベクトルを固有ベクトルとする行列Astは、その固有ベクトルを並べた行列Ptkを用いて以下の式で計算することで、対角化した行列Cukに変換できます。
−1ussttk=Cuk   ←Asttk=Psuuk

同じそれらのベクトルを固有ベクトルとする行列Bstも同様に、行列Ptkを用いて以下の式で計算することで、対角化した行列Dukに変換できます。
−1ussttk=Duk
対角化された行列CとDでは、以下の関係が成り立ちます。
ukks=Dukks  (1)
なぜなら、u=k=sの場合以外では、式1の項が0になるからです。そして、以下の式のように、u=k=sとなるk番目の対角成分がkkkkになり、その積の値は行列CとDの積の順番には関係しないからです。
式1により、対角行列の掛け算の順序が交換可能(可換)です。
この式1の左からPmuを掛け算して、右からはP−1stを掛け算します。
muukks−1st=Pmuukks−1st
muup−1pwwkks−1st=Pmuup−1pwwkks−1st
mwwt=Bmwwt
∴ 行列Amwと行列Bwtの掛け算の順序が交換可能(可換)です。

逆に、n行n列の行列に関して、n個の固有ベクトルの数を完備する”正常な”行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合に、行列Amwの固有ベクトルn個が、そっくりそのまま、行列Bstの固有ベクトルでもあります。そのことを以下で証明します。
mwwt=Bmwwt  (2)
この行列Amwの固有ベクトルn個を並べた行列をPmuとします。
この式2の左からP−1umを掛け算して、右からはPtsを掛け算します。
−1ummwwtts=P−1ummwwtts
−1ummppk−1kwwtts=P−1ummppk−1kwwtts
uk−1kwwtts=P−1ummppkks
ここで、Cukは対角行列であるから、
その対角された成分(固有値)を順番にαとすると、
α−1uwwtts=P−1ummppsα
α−1ummpps=P−1ummppsα
(α−α)P−1ummpps=0us (3)
ここで、行列Amwの全ての固有値αが異なる場合は、
式3の左辺の行列のu行s列のu≠sである成分を(α−α)で割り算した結果が式3の右辺の0行列の各成分の値0と等しくなります。
u≠sの場合、
−1ummpps=0us
すなわち、P−1ummppsは対角行列になります。
つまり、行列Bmpも、行列Amwの固有ベクトルの作る行列Ppsで対角化できます。
行列Bmpを対角化できる行列Ppsの各縦ベクトルは、行列Bmpの固有ベクトルです。
∴ (行列Amwの全ての固有値αが異なる場合は)
行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合には、行列Amwの固有ベクトルn個が、そっくりそのまま、行列Bstの固有ベクトルになります。

よって、行列が単位行列の定数倍以外であって、行列の固有値が重解(重根)を持たないときは、
(1)行列AとBの固有ベクトル(の方向)が同じならば、行列の積AB=BAになり、
(2)行列の積AB=BAならば、 行列AとBの固有ベクトル(の方向)が同じになります。

【対角行列】
対角行列の固有ベクトルは(1,0)と(0,1)で、この固有ベクトルをすべての対角行列が共有します。

そのため対角行列同士では行列の積が交換可能です。
対角行列との行列の積が交換可能な行列は対角行列です。


【回転行列】
また、回転行列の固有ベクトルは(i,1)と(i,−1)であって、この固有ベクトルはすべての回転行列が共有します。 

そのため、回転行列同士では行列の積が交換可能です。
回転行列との行列の積が交換可能な行列は回転行列です。


固有ベクトルを共有する行列は行列の積が交換可能であるという原理は、大学で量子力学を学ぶときなどに利用されます。

【単位行列Emwとその他の行列との計算順の交換関係】
n行n列の単位行列のn個の固有値は全て1であって等しい。
この単位行列は、全ての行列と計算順序を交換できます。
単位行列の固有ベクトルは全ての方向のベクトルが固有ベクトルです。
そのため、単位行列と計算順序を交換する全ての行列毎に、その行列の固有ベクトルは単位行列の固有ベクトルでもあります。
そのことは、以下の様に言うこともできます。
(単位行列Emwの全ての固有値αが等しい場合)
単位行列Estと任意の行列Bstの掛け算の順序がいつでも交換可能(可換)である。その場合に、行列Bmwの固有ベクトルn個を、そっくりそのまま、単位行列Estの固有ベクトルにすることができます。

(結局、行列Amwの固有値が全て異なっていても、又、同じ値が重なっているという場合にも)
行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合には、行列Amwの固有ベクトルn個と、行列Bstのn個の固有ベクトルを同じベクトルに合わせることができます。

固有ベクトルが一致する関係が成り立つことが本質的に重要です。
2行2列の行列の場合に、行列AstとBstの掛け算の順序が交換可能(可換)な場合に、
st=βAst+γEst
となることが試験問題に出されていますが、それは、2行2列の行列で、固有ベクトルが同じ行列がそういう式であらわされるからです。
2行2列の行列でこの関係が成り立つ理由は、
2行2列の行列に限っては、あらゆる対角行列Dstは、固有値の異なる対角行列Cstを使って、
st=βCst+γEst
とあらわすことができることに由来します。
しかし、3行3列以上の行列では、
計算順序が交換可能(可換)な行列同士では、固有ベクトルが一致しますが、
st=βAst+γEstという関係は必ずしも成り立たない。それは、可換な行列同士に普遍的に成り立つ関係ではありません。

しかしながら、それにより、
「2行2列の行列に限っては、単位行列と足し合わせることで、計算順序が交換できる全ての行列を作ることができる」
という便利な関係があることがわかります。

【楕円をあらわす行列と固有ベクトルが同じ行列を作って楕円の固有ベクトル(軸ベクトル)を計算する】

この行列には、列ベクトル同士の内積が0になる、すなわち、列ベクトルが直交するという特別な性質があります。
そのため、この行列は以下のようにあらわすことができます。

この行列Sは、以下のように、ベクトルを、傾き角θの直線に関して対称なベクトルに変換する行列です。

つまり、傾き角度θの直線の方向のベクトル成分はそのままにして、それに直交する方向のベクトル成分には−1を掛け算する変換をする行列です。

傾き角度θの直線の方向のベクトルが第1の固有ベクトルであり、それに直交する方向のベクトルが第2の固有ベクトルです。
それらの固有ベクトルは、以下のように計算することができます。

こうして求めた固有ベクトルは、元の、楕円を与える行列Fの固有ベクトルでもあります。

 こうして、楕円の行列Fの固有ベクトル、すなわち、楕円の軸方向のベクトルが求められた。



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固有値が同じ行列


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行列と連立1次方程式

【解説】
 対角行列Bmkから、以下の様にして行列式Δが0では無い行列Psmを使って、固有値が同じ行列Astを作ることができます。

行列Ast固有値λは以下の行列式により得られます。

上の式のように、その行列Astの固有値λを計算すると、その固有値λは対角行列Bmkの固有値と等しくなります。
対角行列からでは無くても、同様に変換された行列同士の固有値λは等しくなります。

この行列Astの意味を以下で説明します。
あるベクトルXと、そのベクトルが対角行列Bmkにより変換された結果のベクトルYとがある場合:
=Bmk  (1)

その2つのベクトルを、行列Psmで新しいベクトルX’とY’に変換した場合に、その新しいベクトル間の変換の行列をAstであらわせるものとします。
X’=Psm  (2)

Y’=Psm  (3)

Y’=AstX’  (4)

(4)に、(2)と(3)を代入。
sm=Asttk
−1usを左から掛け算する。
−1ussm=P−1ussttk
=P−1ussttk
(1)を代入する。
uk=P−1ussttk
上式が任意のベクトルXで成り立つ条件を求める。
それは、ベクトルXの各成分毎に、係数同士が等しいことである。
それは、以下の式になる。
uk=P−1ussttk
wuを左から掛け算し、P−1kmを右から掛け算する。
wuuk−1km=Pwu−1ussttk−1km=Ewssttm
wuuk−1km=Awm

ベクトル(1,0)が行列Bukで変換されてベクトルλ(1,0)になる。

その各ベクトルをPsmで1次変換すると、

変換されたベクトル同士では、縦ベクトルPt1が行列Astによって縦ベクトルλt1に変換される関係になる。

すなわち、行列Astに関しては、縦ベクトルPt1が固有値λについての固有ベクトルです。
そのため、Ptkは固有ベクトルを並べた行列になっている。
つまり、以下の式が成り立ちます。

ここで、
wuuk−1km=Awm
という式や、
uk=P−1ussttk
という式は、以下のように覚え易い形に変形して覚えます。
suuk=Asttk

この式の左辺は、ベクトルXを対角行列Bukで変換したベクトルを作って、そのベクトルを1次変換Psuで変換する操作です。
右辺は、ベクトルXを前もってPtkで1次変換してしておいて、1次変換後のベクトルを行列Astで変換する操作です。
左辺の操作は右辺の操作と同じ結果を出します。
特に、左辺では、対角行列Bukによって、ベクトル(1,0)を第1の固有値倍に変換し、ベクトル(0,1)を第2の固有値倍に変換します。
右辺では、それらのベクトルがPtkで1次変換された結果のベクトル、すなわち、行列Ptkの縦ベクトルが固有値倍に変換されます。

以上の結果から、行列Astの固有値を計算して、その固有値に対応する2つの固有ベクトルを計算して、その2つの固有ベクトルを並べた行列Ptkを使えば、行列Astを行列Ptkによって対角化した行列Bmkを逆算することができます。
行列Astから対角化した行列Bmkを求めることを、行列の対角化と言います。

(固有値が同じ行列の例)
行列Awuukと行列Bwuukとは等しくない場合が多いですが、
−1km(Amuus)=Bks=(Bkmmu)A−1us
が成り立ちます。
そのため、 行列Awuukと行列Bwuukとは同じ固有値を持ち、行列A−1kmによって互いに変換されます。

また 、行列Awuukと行列Bwuukは同じ固有値を持つので、固有値の和をあらわす行列の対角成分の和も同じになります。
つまり、
tr(AB)=tr(BA)
です。

(固有値が同じ行列の性質)


なお、対角行列Bから、PBP−1=Aとする変換で作ることができない行列Aもあります。
そういう行列Aでも、固有値を求める上記のn行n列の行列式の、
(n−1)の係数=−固有値の和=−行列Aの対角要素の和
になります。
そのため、いずれにしろ、
 固有値の和=行列Aの対角要素の和
が成り立ちます。 

(注意)
固有値が同じ行列同士を変換する行列Ptkが求められるためには、変換される行列Astの固有ベクトルが2つなければなりません。
大学生も間違え易い問題点ですが、
行列Astの固有ベクトルが2つあるのは、以下の場合のみです。
(1)その2つの固有値が異なる場合。
(2)その2つの固有値αが等しいが、行列Ast=α・Estである場合。

2つの固有値が等しい場合で、行列Astが単位行列の固有値倍の行列では無い場合は、固有ベクトルは1つしかありません。その行列Astは、どの行列Ptkで変換しても、対角化された行列には変換できません。

(第2の方法)
次に、行列Ptkで変換しない方法で、固有値が同じ行列を作る方法を説明します。
固有値が同じ行列では対角要素の和(すなわち、固有値の和)が変わらないので、以下のような行列の足し算を考えます。
ここで、行列Astの固有値は以下の式で計算できます。

この固有値が行列Bmkの固有値と等しくなるためには、以下の式が成り立つ必要があります。


この式を満足するパラメータaを持つ行列を足し合わせると、その行列の固有値は変わりません。

この変換方法では、2つの固有値が等しい場合で、行列Astが単位行列の固有値倍の行列では無い場合にも、その行列Astから対角化された(固有値が等しい)行列を作ることができます。
しかし、この変換は、単に固有値が同じ行列を作るだけの処理です。
行列Ptkで1次変換して行列を作るわけではないので、作られた行列の性質が元の行列の性質と同じであるという保証はありません。



【固有値が重根の場合の、固有値が等しい行列】
以下では、固有値が重根の場合に、固有値が同じ行列を作ってみます。
先ず、固有値が重根の対角行列、すなわち単位行列の定数倍の対角行列から、1次変換により、固有値が等しい行列を作ってみます。
単位行列の定数倍の対角行列から、1次変換によって固有値が等しい行列を作ると、その結果は元の行列と変わりません。
そのため、固有値が重根であって対角行列で無い行列は、どのように1次変換しても決して対角行列にはならないのです。

次に、先に説明した第2の方法で、単位行列と固有値が等しい行列を作ってみます。

この新しい行列は元の行列と同じで固有値1を持ちます。この新しい行列の固有ベクトルは(1,1)に比例するベクトルだけです。
それ以外のベクトル(F, F)は、
F(2,1)+F(−1,0)

=F((1,0)+(1,1))+F((0,1)+(−1,−1))
=(F,F)+(F−F)(1,1)
に変換します。
変換の結果の方向が変わらないベクトル、すなわち、固有値倍に変換されるベクトルはベクトル(1,1)の方向のベクトルのみです。

そもそも固有値は、固有ベクトルを求める式が源になって定義されたパラメータです。
この場合は、その求める対象の固有ベクトルが1つしか無いので、
固有値が重根(重解)となって2つ得られたというのは見せかけであって、1つの固有値しか得られていないと解釈できます。



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回転した楕円の方程式(その2)


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行列と連立1次方程式

【解説】
直線を座標原点を中心に回転させる場合は、以下の図のように、回転した直線の方程式が求められます。

直線の式は、直線上の点の位置ベクトルと単位ベクトルaの内積が直線と原点との間の距離cであるという関係をあらわす式ですので、直線を回転すると、その単位ベクトルaが回転します。それで、回転した直線の式は単位ベクトルaを回転変換することで求められます。

次に、楕円を座標原点を中心に回転させる場合を、以下の図で考える。

楕円の式は、楕円の軸をXY座標軸に合わせるように回転を巻き戻した場合の式はわかっています。そのため、回転した楕円上の点(X,Y)を、回転を巻き戻した楕円上の点(X’,Y’)に変換して、その点のXY座標を楕円の式であらわして計算したのが前のページの計算でした。
 このページでは、前のページの計算をもう少し楽に計算する方法を考えます。
以下の計算のように、楕円の式は、ベクトルを軸毎に伸縮する変換をした後にベクトルの内積を計算してその値=1にする方程式が楕円の方程式であると解釈できます。

軸を回転した楕円の、内積をとるべきベクトルは以下のようにして計算できます。

このベクトルの内積は、以下のようにすぐ計算できます。


楕円の回転角度(−θ)は、以下のようにして計算できる。

こうして、回転した楕円の式から、楕円の回転角度の2倍のタンジェントが計算できる。
ここで、2θの回転行列とその2分の1の回転行列の要素の間には以下の関係があることを覚えておくと便利です。

この関係を利用すると、軸を角度θ回転する変換の行列が以下のように求められる。


なお、回転した楕円の軸の長さaとbは、以下のように計算して対称行列Fkuの固有値(1/a)と(1/b)を得ることでわかります。
(F11−λ)(F22−λ)−F12=0
λ−(F11+F22)λ+F1122−F12=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ+2cosθsinθ)(1/(ab))=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ)(1/(ab))=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(1/(ab))=0
(λ−(1/a))(λ−(1/b))=0
∴ 固有値は、(1/a)と(1/b



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行列式の意味と計算方法


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行列と連立1次方程式

【行列式】
ケイリー・ハミルトンの定理の数学的意味を理解するためには、先ず、「行列式」の意味を知る必要があります。

行列式は、ベクトルが張る図形の面積や体積を計算するものです(前のページで説明)。

「行列式」は、行の数と列の数が同じ正方行列の場合に計算できるものです。
(2行2列の行列の行列式)
2行2列の行列の行列式は、
その行列の要素が構成する2つの縦ベクトルが作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。

2行2列の行列Ampの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmpm1p2
で計算します。
この計算に利用する行列
εmp
は、m≠pの場合の、
ε12=1,
ε21=−1
であり、それ以外の、m=Pとなる、
εmp=ε11=ε22=0
です。
行列式
εmpm1p2
は、ベクトル(A11,A21)とベクトル(A12,A22)との作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。

行列式を具体的に計算すると、 εmpm1p2=A1122−A2112

です。
 なお、行列式の計算方法は、行と列を入れ替えても変わらない、行と列に関して対称な式になっています。
すなわち、行列式は、以下の式でも計算できます。
εmp1m2p


以下で、行列式がベクトルの作る平行四辺形の面積を計算するものであることを説明します。

(一言で言うと、行列式の計算式を見ると、
1列目のベクトルに垂直で長さが同じベクトルと、2列目のベクトルとの内積の計算であることがわかります。
その計算は、1列目のベクトルを底辺として2列目のベクトルを斜辺とする平行四辺形の面積を計算するものです。
これで証明ができてしまいましたが、以下の証明も面白いので読んでください。)

以下のように、座標が回転しても結果が変わらないように面積の計算規則を定める点がポイントです。



X座標軸を回転させてY座標軸に重ねると、Y座標軸はX座標軸の負の方向を向いて重なる。そのため、X成分にY成分を掛け算した結果を正にした場合、このように座標を回転させても面積が変わらないようにするには、必然的に、Y成分にX成分を掛け算した結果を負にしなければならない。それで、計算規則が、行列式の計算規則に定まってしまうのです。

(3行3列の行列式)
3行3列の行列の行列式は、その行列の要素が構成する3つの縦ベクトルが作る斜方体の体積をあらわすという意味を持ちます。

3行3列の行列Ampの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmprを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmprm1p2r3
で計算します。
この計算に利用する行列(正しくは、テンソルと呼ばれる)
εmpr
は、m≠p、m≠r、p≠rの場合の、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=−1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。
行列式
εmprm1p2r3
は、ベクトル(A11,A21,A31)とベクトル(A12,A22,A32)とベクトル(A13,A23,A33)との作る斜方体の体積をあらわすという意味を持ちます。

行列式を具体的に計算すると、
εmprm1p2r3
=A112233
+A213213
+A311223
−A211233
−A312213
−A113223

です。


この行列式が斜方体の体積をあらわすので、3つの3次元ベクトルの先端と原点とを頂点とする三角錐の体積は、その3つの3次元ベクトルを3つの列ベクトルとする行列式の値を6分の1にした値になります。

このように、行列式は、行列を構成するベクトルが作る面積や体積をあらわします。

(n行n列の行列式)
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn){A(p1)1(p2)2(p3)3・・・A(pn)n
で計算します。
ここで用いた添え字がn個の行列(正式には、添え字2つのものを行列と呼び、添え字3つ以上のものはテンソルと呼ばれる)
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn)は、以下の値を持ちます。
ε(1)(2)(3)・・・(n)=1
この添え字の位置を交換すると(−1)倍になる。例えば、1と2を交換すると、
ε(2)(1)(3)・・・(n)=−1
これらの添え字の位置を交換した要素以外は全て0です。例えば、
ε(1)(1)(3)・・・(n)=0

【行列式は行と列を入れ替えても結果が同じ】
 行列式は、計算の元になる行列の行と列に関して対称な計算式です。そのため、行と列を入れ替えた行列でも行列式は同じ値になります。

【行列式が0になる行列の性質】
 行列を列ベクトルに分割したとき、その列ベクトルが独立でなく、1つの列べクトルが他の列ベクトル(重みつき和)であらわせる場合は、行列式が0になります。

 (2行2列の行列の場合)
 例えば、2行2列の行列の場合は、行列式が0になる場合は、行列の2つの列ベクトルが、平行な2つのベクトルの場合です。

 この平行な2つのベクトルで構成する平行四辺形の面積は0です。
行列式はその面積をあらわすものなので、その行列式は0になります。

 (3行3列の行列の場合)
 3行3列の行列の場合は、行列式が0になる場合は、行列を構成する3つのベクトルが、同一平面上にある場合です。

 その3つのベクトルで構成される斜方体は、その平面上の高さが0であるので、体積が0です。
行列式はその体積をあらわすものなので、その行列式は0になります。

行列式は、そのうちの2つの行が同じ行ベクトルであると、行列式が0になります。2つの列が同じ列ベクトルの場合も0になります。

また、行列式が0になる行列は、あるベクトルを0ベクトルに変換する性質があります。後に説明する内容ですが、そのベクトルは、その行列の、値が0の固有値に対する固有ベクトルです。
そして、その固有ベクトルには、次のページで説明する余因子行列の列ベクトルが比例します。

なお、以下の行列式の積の計算は間違えやすい。






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2012年02月19日(Sun)▲ページの先頭へ
回転した楕円の方程式


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行列と連立1次方程式

以下の説明は少し長くなります。回転した楕円の式を手っ取り早く求める方法を次ページに書きましたので、楕円の式のみに興味のある人は次のページに進んでください。
(ただし、このページの最後の、楕円の軸ベクトルの公式は見て欲しい。)

【解説】
直線を座標原点を中心に回転させる場合は、以下の図のように、回転した直線の方程式が求められます。

直線の式は、直線上の点の位置ベクトルと単位ベクトルaの内積が直線と原点との間の距離cであるという関係をあらわす式ですので、直線を回転すると、その単位ベクトルaが回転します。それで、回転した直線の式は単位ベクトルaを回転変換することで求められます。

次に、楕円を座標原点を中心に回転させる場合を、以下の図で考える。

楕円の式は、楕円の軸をXY座標軸に合わせるように回転を巻き戻した場合の式はわかっています。そのため、回転した楕円上の点(X,Y)を、回転を巻き戻した楕円上の点(X’,Y’)に変換して、その点のXY座標を楕円の式であらわします。
回転した楕円上の点の座標(X,Y)を(X’,Y’)に変換する、回転の巻き戻し変換の行列をCmkとします。
以下では、この行列による座標の変換の式を楕円の式に代入して、その代入した式を変形することで回転した楕円の式を計算します。



以上の計算結果をまとめると、

こうして、回転した楕円をあらわす方程式が計算できました。
回転した楕円の方程式をあらわすために対称行列Fksを利用しました。

この楕円をあらわす方程式の左辺Xksは、
ベクトルXとべクトル(Fks)との内積を計算する式です。
すなわち、べクトルXを行列Fksで変換して作ったベクトルと元のベクトルとの内積を計算する式です。
元のベクトルXが固有ベクトルのとき、固有ベクトルは固有値倍に拡大されます。
その内積の計算結果は、元のベクトルの長さの2乗を固有値倍した値になります。

結局、楕円は、位置ベクトルXを対称行列Fksで変換して作ったベクトルと元の位置ベクトルとの内積が1になるという関係を満たす点の集合です。

次に、回転した楕円の式が与えられたとき、その楕円はどれくらいの角度回転した楕円であるか、その回転角度を楕円の式から計算する方法を考えます。
その方法は、以下の楕円の軸の性質を利用します。


なお、この軸ベクトルBは、楕円の(−θの)回転変換の行列の2列目の列ベクトルC−1k2です。


なお、この軸ベクトルGは、楕円の(−θの)回転変換の行列の1列目の列ベクトルC−1k1です。

以上のように、回転した楕円の軸ベクトルは、対称行列Fksの固有ベクトルです。そのため、対称行列Fksの固有ベクトルを計算すれば回転した楕円の回転角度がわかります。

なお、回転した楕円の軸の長さaとbは、以下のように計算して固有値(1/a)と(1/b)を得ることでわかります。
(F11−λ)(F22−λ)−F12=0
λ−(F11+F22)λ+F1122−F12=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ+2cosθsinθ)(1/(ab))=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(cosθ+sinθ)(1/(ab))=0
λ−((1/a)+(1/b))λ+(1/(ab))=0
(λ−(1/a))(λ−(1/b))=0
∴ 固有値は、(1/a)と(1/b

楕円の方程式は、固有ベクトルの方向では、
ベクトルの長さの2乗×固有値=1
すなわち、
ベクトルの長さの2乗=1/固有値
よって、そのベクトルの長さはaとbです。

以下で、この固有値λ毎に固有ベクトルを計算します。

固有値λ=(1/a)の場合、
行列Fks−λEksを計算する。
11−(1/a)E11=((−1/a)+(1/b))sinθ
12−(1/a)E12=((−1/a)+(1/b))cosθsinθ
21−(1/a)E21=((−1/a)+(1/b))cosθsinθ
22−(1/a)E22=((−1/a)+(1/b))cosθ
この行列の余因子行列Hmpは、以下の式になる。
11=((−1/a)+(1/b))cosθ
12=−((−1/a)+(1/b))cosθsinθ
21=−((−1/a)+(1/b))cosθsinθ
22=((−1/a)+(1/b))sinθ
この余因子行列の縦ベクトルHm1は固有ベクトルに比例する。
m1=((−1/a)+(1/b))(cosθ, −cosθsinθ)
(注意)表示の都合で、列ベクトルの2成分を1行に記載した。
ここで、((−1/a)+(1/b))cosθ≠0の場合に、
このベクトルを((−1/a)+(1/b))cosθで割り算すると、
(cosθ, −sinθ)
という固有ベクトルが得られる。
あるいは、−((−1/a)+(1/b))sinθ≠0の場合に、
m2を −((−1/a)+(1/b))sinθで割り算すると、
同じく、
(cosθ, −sinθ)
が固有ベクトルとして得られる。
結局、(−1/a)+(1/b))≠0の場合に、
(cosθ, −sinθ)
が固有ベクトルとして得られる。
これは、楕円の軸ベクトルGである。

固有値λ=(1/b)の場合、
行列Fksは、a→b,b→a,cosθ→sinθ,sinθ→−cosθという置き換えをしたら同じ式になるので、
固有値(1/a)の固有ベクトルの解を、そのように置き換えることで、固有値(1/b)の固有ベクトルの解になる。
∴ 固有ベクトルは、
(sinθ, cosθ)
これは、楕円の軸ベクトルBである。

(蛇足)
固有ベクトルを求めて楕円の回転角度を求める以外の方法で楕円の回転角度(−θ)を計算する方法として、以下のようにしても角度θを計算できる。
((−1/a)+(1/b)){cosθ−sinθ}≠0の場合に、
2F12/{F22−F11}=2sinθcosθ/{cosθ−sinθ}=tan(2θ)
こうして、回転した楕円の式から、楕円の回転角度の2倍のタンジェントが計算できる。

この、楕円の回転角度2θの公式を導く方法として、固有ベクトルが同じ行列(対称変換行列)を計算することで、この公式を導くこともできる。

【楕円の軸ベクトル(固有ベクトル)の公式】
一方、以上の計算の結果の、対称行列Fの固有ベクトル(角度−θ方向の、楕円の軸の方向のベクトル)をあらわす公式は以下のようにあらわせる。上の蛇足の公式を覚えるよりは、以下の計算手順を含めた公式を覚える方が覚え易いのではないかとも考える。
先ず、固有値は以下の式で計算できる。

この固有値毎に以下のように固有ベクトルが計算できる。

楕円の軸ベクトルの公式は上の蛇足の公式と以下の関係で結び付いています。




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行列の掛け算の定理


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行列と連立1次方程式

【解説】
行列の掛け算はどういう演算に応用でき、どういう演算には応用できないかは、行列の掛け算の定理により定められます。
以下で、この行列の掛け算の定理を証明します。

(条件1)ベクトルDが、以下の式1と式2によりベクトルFに変換されること。その式の係数が行列Aを成すこと。

式1と式2の演算の係数を添え字を付けて区別して式3で表します。
この式3は、式3’とあらわすと便利です。
この表し方はアインシュタインが提案した表記方法です(アインシャタインの縮約記法)。
この式3’は、変数で表した添え字の変数名が同じ場合に、その変数名の添え字のあらゆる場合(この場合は1と2のみ)について和をとることにした式です。

(条件2)ベクトルFが、以下の式4と式5によりベクトルGに変換されること。その式の係数が行列Bを成すこと。

式4と式5の演算の係数を添え字を付けて式6で表します。
この式6は、アインシュタインの縮約記法の式6’であらわせます。

式6’に式3’を代入すると式7が得られます。
式7は、更に式8に変形できます(式8はアインシュタインの縮約記法であらわした式です)。
式8’のように、演算Aと演算Bを合成した演算Cを考えます。
式8から、演算Cをあらわす行列Cの要素の値を計算する式9が得られます。
こうして、演算AとBの行列の要素を用いた式9で演算Cをあらわす行列Cの要素が計算できることがわかりました。

この演算Cを、式10のように、演算Aと演算Bの積(掛け算)と定義します。
そして、その演算Aと演算Bの掛け算である演算Cの行列の要素は式9’で計算できます。
これが、行列の掛け算の定理です。

すなわち、行列の掛け算の定理を、以下のようにあらわすことができます。
(条件1)ベクトルを式1〜2でベクトルに変換する演算Aの行列Aが定義され、
(条件2)ベクトルを式4〜5でベクトルに変換する演算Bの行列Bが定義されている場合に以下のことが成り立つ。
(結果)
第1のベクトルを演算Aで変換して第2のベクトルを得、更に、第2のベクトルを演算Bで変換して第3のベクトルを得る場合、
その2つの演算は、第1のベクトルを第3のベクトルに変換する演算Cにまとめることができる。
演算Cの行列Cは、式9’で計算することで求めることができる。
その演算Cを、演算Aに演算Bを掛け算した演算であると定義する。
演算Cの行列の要素を計算する式9’の計算を、行列の掛け算と定義する。

【計算の形】
なお、この掛け算の計算方式をベクトルAとBの内積にあてはめると、以下の形の行列の計算になる。

この計算は、横ベクトルAと縦ベクトルBの積であらわせる。
一方、アインシュタインの縮約記法では、ベクトルを縦ベクトルと横ベクトルの形に区別しないで内積の計算を表現できる。




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回転変換の行列の計算で三角関数の加法定理を得る


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行列と連立1次方程式

【解説】


(X,Y)座標であらわされるベクトルを、左回りに角度θ回転させて、(X’,Y’)座標であらわされるベクトルにする変換は以下の式になります。

X’=(cosθ)X−(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y
この変換は次式のように行列であらわせます。


θ=α+β
の場合、

(1)角度αの回転変換の行列(回転行列)は、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(2)角度βの回転変換の行列(回転行列)も、行列をベクトルに掛け算してベクトルを得る式であらわされている。
(3)そのため、以下の、行列の掛け算の定理が成り立つ。
すなわち、
(A)第1のベクトルに角度αの回転変換をして第2のベクトルを得、
(B)その第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、
(C)1つの行列であらわせる。
その行列は、
角度αの回転行列に角度βの回転行列を行列の掛け算計算で得た行列と等しい。

また、第1のベクトルに角度αの回転変換をして得た第2のベクトルに角度βの回転変換を行って第3のベクトルを得る変換は、θ=α+βの回転変換と同じである。

その回転行列を計算して比較すると、上式のように、三角関数の加法定理が得られます。

(補足)
なお、
(1)角度αの回転行列と角度βの回転行列を掛け合わせた計算計算結果に加法定理を適用すると角度(α+β)の回転行列になるので、
(2)角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になる
と説明されることがあるが、
その説明は本末転倒です。

角度αの回転に角度βの回転を重ねると角度(α+β)の回転になるのは自明のことであって、
(1)その自明な事実に、
(2)2つの演算を重ね合わせた演算の行列は行列の掛け算によって導出できる行列の掛け算の定理を適用することで、
(3)加法定理という関係式が導き出されます。

定理とその定理から導出できる結果とは、その関係を逆転させて、結果から大元の定理を導き出すこともできます。
そのため、どの事実が自明で主となる事実であり、どの事実が従属的に分かる関係であるかを的確に判断する数学的センスが大切です。

(蛇足)
ここで、2θの回転行列とその2分の1の回転行列の要素の間には以下の関係があることを覚えておくと便利です。




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2012年02月06日(Mon)▲ページの先頭へ
座標の回転変換の式のおぼえ方

大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

【解説】

(X,Y)の座標をあらわすベクトルを、左回りに角度θ回転させて、(X’,Y’)の座標をあらわすベクトルにする変換は以下の式になります。

X’=(cosθ)X−(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y

この変換の式のおぼえ方は、上の図を思い描いて、図から、

X座標のみがある場合のY’座標が(sinθ)・Xであること。
Y座標のみがある場合のX’座標が(−sinθ)・Yであること。

を想像する。
次に、それ以外は、係数がcosθの項を加えることで、回転変換の式ができあがります。

(補足)
三角関数の加法定理を知らないと回転行列が導き出せないという誤解が流通しているようですが、そのようなことはありません。
X座標のみがある場合のY’座標が(sinθ)・Xである。
X座標のみがある場合のX’座標が(cosθ)・Xである。

そのため、回転行列Aの要素は、
11=(cosθ)
21=(sinθ)
Y座標のみがある場合のX’座標が(−sinθ)・Yである。
Y座標のみがある場合のY’座標が(cosθ)・Yである。

そのため、回転行列Aの要素は、
12=(−sinθ)
22=(cosθ)
こうして、加法定理を使わずに、回転行列の全ての要素がわかります。

この回転行列が全てのベクトルを角度θ回転することの証明:
(1)全てのベクトルはX方向のベクトルとY方向のベクトルに分解されます。
(2)そして、その各々のベクトルが同じ角度θ回転します。
(3)そのため、その成分を合成したベクトルもまた角度θ回転します。
(証明おわり)


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複素数平面での座標回転を応用した例
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2012年02月05日(Sun)▲ページの先頭へ
行列の固有値が重根の場合の固有ベクトル


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行列と連立1次方程式

【解説】
2行2列の行列の場合は、固有値λは、以下の行列式を0にするλを計算することで求められます。
εsp(As1−λEs1)(Ap2−λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、固有ベクトルがあります。

すなわち、行列は、固有値毎のあるベクトル(固有ベクトル)を固有値倍にします。


一方λの解が重根である場合、すなわち、α=βの場合は、単位行列に比例する行列でなければ、
固有値αに対応する固有ベクトルは1つしか無い。

(注意)単位行列に比例する行列や0行列の場合は、例外的に、全方向のベクトルが固有ベクトルであり、複数の固有ベクトルを持つことに注意。


考え易くするために、λ=α=β=0となる行列Aspを考える。
そのような場合の行列Aspの例は、
11=1
12=1
21=−1
22=−1

εsp(As1−λEs1)(Ap2−λEp2
=(A11−λ)(A22−λ)−A1221
=(1−λ)(−1−λ)+1=λ=0

この行列の余因子行列Cptは、
11=−1
12=−1
21=1
22=1
よって、この行列Aspは、余因子行列の列ベクトル(C11, C21)=(−1,1)をλ=0倍の0ベクトルに変換する。この列ベクトル(−1,1)が固有ベクトルである。


一方、行列Aspは、ベクトル(a,b)を、
(a+b, −a−b)=(−a−b)(−1,1)に変換する。
すなわち、固有値0に対する固有ベクトルに平行な、固有ベクトルの(−a−b)倍の、ベクトルに変換する。
すなわち、列ベクトル(a,b)に対して、列ベクトル(−1,1)に垂直な列ベクトル(−1,−1)との内積(−a−b)を計算して、その値を列ベクトル(−1,1)に掛け算した列ベクトルを求める、という変換を行なうのです。

行列Aspが任意のベクトル(a,b)を固有ベクトルに平行なベクトルに変換した後で再度行列Aspで変換すれば、それは0ベクトルになる。


同様に、λ=α=β=0となる2行2列の行列Aspは、どの行列も、
その行列で任意のベクトルを変換すれば、固有値が0の固有ベクトルに平行なベクトルに変換し、
2重に変換すれば、任意のベクトルを0ベクトルに変換する。
任意のベクトルを0ベクトルに変換する元の行列は0行列である。すなわち、
sppt=0st
である。


【第1の証明】
このことの証明を簡単に行なうには、ケイリー・ハミルトンの定理を先に証明しておいて、ケイリー・ハミルトンの定理を使って、これを証明するのが良いように考える。

(証明開始)
2行2列のケイリー・ハミルトンの定理は、固有値αとβに関して、
(Asp−αEsp)(Apt−βEpt)=0st
である。
このα=β=0の場合は、
sppt=0st
になる。
また、Aspの余因子行列Cmtの列ベクトルをCとすると、それは、固有値α=β=0の固有ベクトルであるから、
sp=0
また、任意のベクトルDに関して、
sppt=0

ptは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCに平行なベクトルである。
(証明おわり)

【第2の証明】
(証明開始)
重根の場合、すなわち、α=β=0となる場合に、
1つの固有ベクトル
(C11, C21)=(−1,1)≡C 
が得られ、その固有ベクトルに対して、
(Amp−α・Emp)C=0  (式1)
になる。
次に、行列(Amp−α・Emp)による任意のベクトルDの変換結果のベクトルは、以下の式2であらわせる。すなわち、
(1)ベクトルDがベクトルCと線形独立な場合は、ベクトルDと固有ベクトルCを用いて、 
(Amp−α・Emp)D=gD+hC  (式2)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルDがベクトルCと線形独立で無くベクトルCの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式2であらわせる。

(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、

式1により、
(Amp−α・Emp)(h/g)C=0  (式3) 
が得られる。
この式3を式2に足し合わせると、
(Amp−α・Emp)(D+(h/g)C)=gD+hC ,
mp(D+(h/g)C)=(α+g)・(D+(h/g)C) (式4)
式4は、ベクトル(D+(h/g)C)が行列Ampにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とした最初の仮定が不適である。
∴ g=0

任意のベクトルFに関する式2は、
(Amp−α・Emp)D=hC

(Amp−α・Emp)Dは、行列Aspで0ベクトルに変換される固有ベクトルCに平行なベクトルである。
(証明おわり)




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ベクトルの座標を回転させる行列の固有値と固有ベクトル


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行列と連立1次方程式

【解説】
座標値(X,Y)であらわされるベクトルを、左回りに角度θ回転させて、座標値(X’,Y’)であらわされるベクトルにする変換をあらわすと以下の式になります。
X’=(cosθ)X−(sinθ)Y
Y’=(sinθ)X+(cosθ)Y
この変換は、以下のように行列Aspであらわされています。
X’=Asp
ただし、この表記方法はアインシュタインの行列の積の表記方法です。通常の行列表現は以下のものです。

そして、ベクトル及び行列の各要素は以下の通りです。
X’=X’
X’=Y’
=X
=Y
11=cosθ
12=−sinθ
21=sinθ
22=cosθ
この行列Aspは回転変換をあらわしますが、この行列は、あるベクトル(固有ベクトル)をλ倍にする変換でもある。
λは、以下の行列式を0にするλ(それを固有値と呼ぶ)を計算することで求められます。
εsp(As1−λEs1)(Ap2−λEp2)=0
ここで、行列Espは単位行列です。
また、そのλの解(固有値)α、β毎に、
(1)λの解α(=固有値)については、
行列(Asp−αEsp)の余因子行列Cptを計算し、その余因子行列Cptの列だけを取り出した列ベクトルCp1(又はCp2)が、
(Asp−αEsp)Cp1=0
(0は0ベクトル)
spp1=α・Espp1=α・Cs1
を満足する。Cp1がα倍になる。
p1が固有ベクトルである。
p2もα倍になる固有ベクトルであるが、Cp1に平行なベクトルであるので、Cp1を求めるのもCp2を求めるのも同じことである。

(2)λの解β(=固有値)については、
行列(Asp−βEsp)の余因子行列C’ptを計算し、その余因子行列C’ptの列だけを取り出した列ベクトルC’p1(又はC’p2)が、
spC’p1=β・C’s1
を満足する。
C’p1(又はC’p2)が固有ベクトルである。

(3)固有値を具体的に求める
εsp(As1−λEs1)(Ap2−λEp2)=0
(cosθ−λ)(cosθ−λ)+(sinθ)(sinθ)=0
λ−2(cosθ)λ+1=0
(λ−cosθ)=−sinθ
(λ−cosθ)=±i・sinθ
λ=cosθ±i・sinθ
α=cosθ+i・sinθ
β=cosθ−i・sinθ
(4)この固有値αに対する行列(Asp−αEsp)の余因子行列Cptを計算する。
11−αE11=−i・sinθ
12−αE12=−sinθ
21−αE21=sinθ
22−αE22=−i・sinθ
余因子行列Cptは、
11=−i・sinθ
12=sinθ
21=−sinθ
22=−i・sinθ
よって、固有ベクトルは、
(−i・sinθ, −sinθ)
sinθ≠0のとき、
−sinθで割り算して、もっと簡単にした固有ベクトルは、
(i, 1)
(注意)sinθ=0の場合、この割り算計算は(0で割り算するので)無効です。sinθ=0の場合、すなわち、回転角度が0の場合の行列Aspの固有ベクトルが(i, 1)であるかかどうかが定まりません。実際、回転角度が0の場合の行列Aspは単位行列Espになりますが、その固有ベクトルは、あらゆる方向のベクトル全てが固有ベクトルになります。(注意おわり)

この固有ベクトルに左から行列Aspを掛け算すると、
(i・cosθ−sinθ, i・sinθ+cosθ)
=(i・sinθ+cosθ)(i, 1)=α(i, 1)

行列Aspは、実数のベクトルだけを考えると回転変換しかしないのに、複素数で考えると、固有ベクトルを固有値倍に変換する。

(5)固有値βに対する行列(Asp−βEsp)の余因子行列Cptを計算する。
11−βE11=i・sinθ
12−βE12=−sinθ
21−βE21=sinθ
22−βE22=i・sinθ
余因子行列Cptは、
11=i・sinθ
12=sinθ
21=−sinθ
22=i・sinθ
よって、固有ベクトルは、
(i・sinθ, −sinθ)
sinθ≠0のとき、
sinθで割り算して、もっと簡単にした固有ベクトルは、
(i, −1)
この固有ベクトルに左から行列Aspを掛け算すると、
(i・cosθ+sinθ, i・sinθ−cosθ)
=(−i・sinθ+cosθ)(i, −1)=β(i, −1)

このように、固有ベクトルを固有値倍に変換する。




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2012年02月03日(Fri)▲ページの先頭へ
行列式が0になる行列は、余因子行列の列ベクトルを0ベクトルに変換する


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行列と連立1次方程式

行列Ampに対する余因子行列Bstを、以下の式で定義します。

(1)
2行2列の行列Ampの余因子行列Bstは、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
1m=εmpp2
2p=εmpm1
で計算します。
この計算に利用する行列
εmp
は、
ε12=1,
ε21=−1
であり、それ以外の
εmp=0
です。
余因子行列Bstは、具体的には、
11=A22
12=−A12
21=−A21
22=A11


こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpm1p2=Δ
1mm2=εmpm2p2=0
2pp1=εmpm1p1=0
2pp2=εmpm1p2=Δ

sttp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。


(2)
3行3列の行列Ampの余因子行列Bstは、
エディントンの行列式の計算記号εmpsを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
1m=εmpsp2s3
2p=εmpsm1s3
3s=εmpsm1p2
で計算します。
この計算に利用する行列
εmpr
は、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=−1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。

こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
3行3列の行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpsm1p2s3=Δ
1mm2=εmpsm2p2s3=0
・・・
結局、
smmp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。

(3)
このように、余因子行列Bsmは、
行列Ampの左から掛け算することで、Δ・Esp
となる行列です。

(4)
また、行列Ampの右から掛け算する場合も、同じことになります。
そうなるのは、行列式が以下の式でもあらわせることに由来します。
つまり、2行2列の行列式Δは、
Δ=εmpm1p2
Δ=εmp1m2p
ともあらわせ、
また、3行3列の行列式Δは、
Δ=εmpsm1p2s3
Δ=εmps1m2p3s
ともあらわせることに由来します。
(この証明は省略)

以下では、余因子行列Bsmの右側からの掛け算でも、この関係を満足することを確認するために、2行2列の行列を例に、直接計算してみます。
11=A22
12=−A12
21=−A21
22=A11
この余因子行列Btmの左から行列Astを掛け算すると、
1tt1=A1111+A1221=A1122−A1221=Δ
1tt2=A1112+A1222=−A1112+A1211=0
2tt1=A2111+A2221=A2111−A2221=0
2tt2=A2112+A2222=−A2112+A2211=Δ

sttm=Δ・Esm


このように、余因子行列Btmは、
行列Astの右から掛け算しても左から掛け算しても、Δ・Esm
となる行列です。

(5)
ベクトルBt1に対して、
(ベクトルBt1は、(B11, B21)です。)
stt1=Δ・Es1
そのため、行列Astの行列式Δ=0の場合、
行列Astは、ベクトルBt1を0ベクトルに変換します。

このベクトルはこの行列の固有値0に対する固有ベクトルです。
また、ベクトルBt2に対しても、
stt2=Δ・Es2
そのため、行列Astの行列式Δ=0の場合、
行列Astは、ベクトルBt2も0ベクトルに変換します。

2行2列の行列Astの行列式Δ=0の場合、
ベクトルBt1とベクトルBt2は、同じ方向を向いた平行なベクトルです(証明は省略)。そのため、そのうち一方だけで(ただし、それが0ベクトルで無いベクトルを選ぶこと)、0ベクトルに変換されるベクトルの代表にすることができます。

このように、行列Astの行列式Δ=0の場合、
その余因子行列の列ベクトルBt1(又はBt2)は、行列Astが0ベクトルに変換します。



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2012年01月31日(Tue)▲ページの先頭へ
余因子行列とケイリー・ハミルトンの定理


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行列と連立1次方程式

(単位行列について)
単位行列Empは、
m≠pのとき、Emp=0,
m=pのとき、Emm=1である。


(0行列について)
0行列0mpは、
mとpがどの場合も、0mp=0

【余因子行列】
 余因子行列は、逆行列を導く基礎の行列で重要な行列ですが、高校生には教えられていません。高校生向けの一部の参考書に「余因子行列」の名前が登場するのみです。
 余因子行列の持つ数学的意味は大きく、そのため、余因子行列の全てを学ぶには、かなりの時間を必要とします。教育時間にゆとりを持てない「ゆとり教育」の下では、それを教えるゆとりが無いようです。
 そのため、高校生に余因子行列を教えるのはタブーになっているようなので、高校生の間は、以下の余因子行列の性質を知っても、その知識を隠して生活して下さい。自分自身が行列の性質を理解する助けにするためだけに用いるようにしてください。

(1)2行2列の行列の余因子行列
2行2列の行列Ampに対する行列式Δは、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
Δ=εmpm1p2
で計算しましたが、
その行列Ampに対する余因子行列Bstは、
その積の要素の1つを空欄にした以下の式で定義します。
1m=εmpp2  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。
2p=εmpm1  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
この計算に利用する行列
εmp
は、m≠pの場合では、
ε12=1,
ε21=−1
であり、
それ以外の、
m=pとなるεmpは、
ε11=ε22=0
です。
ここで、
余因子行列B=(余因子の行列Q)
Qの左上の添え字tは「転置行列」=行と列を入れ替えた行列、をあらわす記号です。
stst=Qts
1m1m 
=Qm1=εmpp2  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。
2p2p 
=Qp2=εmpm1  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
余因子の行列Qのm行目1列目の要素(余因子)のQm1は、行列式Δを計算する式のAm1を空欄にした形のεmpp2という式で定義されます。
このQm1は、Am1を含む行列式Δと、行列εmpによって以下のように関係付けられています。
つまり、行列εmpは、行列式Δの計算において、Am1が掛かって成る項Am1p2に関して、それに1を掛け算して加え合わせるか、(−1)を掛け算することで引き算するか、あるいは、それに0を掛け算することでその項は無くすか、の計算の制御を行なっています。
m1は、その計算の制御を行なう行列εmpを持っているので、
m1にも、そのAm1に関するAm1p2の項に対応して、行列式Δと同じ計算の制御によってAp2の項が加えられます。


ちなみに、行列式Δは、Δ=εmpm1p2
で計算するので、
Δ=(εmpm1)Ap2=Qp2p2
が成り立ち、かつ、
Δ=(εmpp2)Am1=Qm1m1
が成り立ちます。
 この式が意味することは、
(a)行列式Δを構成するどの項も、いずれかのp(p=1又は2)のAp2が掛かっています。
(b)行列式Δを構成するどの項も、いずれかのm(m=1又は2)のAm1が掛かっています。
(c)そして、 
k1=εkp1・Ap2+εmpm1・Ap2
ですので、
k1は、Ak1を1にし、m≠kであるAm1を0にして、Ak1が掛かる項のみを計算した行列式でもあります。
 そのため、余因子の行列Qtsは、行列式Δを構成する多数の項から、Atsに掛かる係数を集めて(2行2列の行列の場合は係数は1つしかありませんが)それを要素Qtsとした行列です。
 つまり、
行列式はΔ=εmpm1p2≡Σmpmpm1p2)
=ε121122+ε212112
=A1122−A2112です。
この行列式の計算式では、アインシュタインの縮約記法によって、εmpのmは、あらゆる値のm(及びあらゆる値のp)で式の和をとります。
一方、余因子の式のQm1=εmpp2のεmpのmは、Qm1のmに対応する1つのmに限定されていて、
εmpのpのみがあらゆる値の場合について式の和をとります。
例えば、余因子の1つのQ11=ε1pp2≡Σ1pp2
=(ε1112+ε1222)=A22です。
この値A22は、行列式の和を構成する項のうち、A11が掛かった項、すなわち、項A1122のA11に掛かる値です。
他のQtsも、同様に、行列式Δの和を構成する項のうち、Atsが掛かった項における、Atsに掛かる値です。

この余因子の行列Qにおける列ベクトルQt1=εtpp2は、列ベクトルAp2に垂直なベクトルです。

余因子の行列の要素Qt1は、行列Aの行列式のうち、At1に掛かる係数です。 
そして、この余因子の行列Qには、その列ベクトルと、行列Aの列ベクトルの内積を計算すると、
行の番号同士が一致すれば、内積の結果がΔになり、行の番号が一致しなければ、内積が0になるという大切な性質があります。
t1・Qt1=At1・εtpp2=εtpt1p2=Δ
t2・Qt1=At2・εtpp2=εtpt2p2=0
t1・Qt2=At1・εptp1=εptp1t1=0
t2・Qt2=At2・εptp1=εptp1t2=Δ
 この各ベクトル同士の内積の結果を行列の形にまとめると、
すなわち、行列Aのm列目の列ベクトルと、行列Qのp列目の列ベクトルとの内積の結果を、m行p列の行列にまとめてあらわすと、以下の式になる。
tm・Qtp=Δ・Emp 
この関係がある理由は、
t1は、行列Aの行列式の各項から、At1に掛かる係数を抽出した結果だからです。
その各係数Qt1に各At1を掛け合わせて、全てのtの場合についての和を取れば行列式の値そのものを計算する式に戻ります。
 また、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせれば、それは、行列式の計算において、At1の列ベクトルの位置にAt2の列ベクトルを置いて行列式を計算することに等しくなります。
行列式の計算では、2つの列ベクトルが等しければ、その行列式は0になります。
そのため、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせるということを行なうと、t2の列ベクトルが2行ある行列の行列式を計算することに等しくなり、その計算結果は、
t2・Qt1=0
になります。
(このため、余因子の行列の列ベクトルQt1は、元の行列の余りのベクトルAt2に垂直なベクトルです)


このように作られた列ベクトルで構成される行列tsを、行列の掛け算の計算規則の中で便利に使えるように、その行と列を入れ替えて定義したのが余因子行列stです。
行列の掛け算の計算規則では、ベクトルの内積は行ベクトルと列ベクトルの積であらわされるから列を行と入れ替えたのです。

余因子行列Bstは、余因子の行列tsの行と列を入れ替えた行列で、
11=A22
12=−A12
21=−A21
22=A11
です。


こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpm1p2=Δ
1mm2=εmpm2p2=0
上の計算は2つの列ベクトルが同じ行列の行列式を計算することになるので、値が0になる。
2pp1=εmpm1p1=0
2pp2=εmpm1p2=Δ

sttp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。

(2)3行3列の行列の余因子行列
3行3列の行列Ampに対する行列式Δは、
エディントンの行列式の計算記号εmpsを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
Δ=εmpsm1p2s3
で計算しましたが、
その行列Ampに対する余因子行列Bstは、
その積の要素の1つを空欄にした以下の式で定義します。
1m=εmpsp2s3  ・・・行列式ΔのAm1を空欄にした。B2p=εmpsm1s3  ・・・行列式ΔのAp2を空欄にした。
3s=εmpsm1p2  ・・・行列式ΔのAs3を空欄にした。
この計算に利用する行列(正しくはテンソルと言う)
εmpr
は、
ε123=ε231=ε312=1
ε213=ε321=ε132=−1
であり、それ以外の
εmpr=0
です。


こうして計算した余因子行列Bstを行列Ampに掛け算すると、
3行3列の行列Ampの行列式=Δとすると、
1mm1=εmpsm1p2s3=Δ
1mm2=εmpsm2p2s3=0
・・・
結局、
smmp=Δ・Esp
このEspは、単位行列。


(3)
このように、余因子行列Bsmは、行列Ampと掛け算することで、Δ・Esp
となる行列です。
smmp=Δ・sp

【余因子行列の可換性】
また、余因子行列Bsmは、
pssm=Δ・Epm

となる行列でもあります。
(証明開始)
余因子の行列Qmsにおいて、行列Atsのs列目の列ベクトルと行列Qmsのp列目の列ベクトルとの内積について、
ts・Qtp=Δ・Esp
が成り立ちましたが、それは行列式の計算に帰着したためでした。
 一方、行列式は、行と列を入れ替えても同じ結果になりますので、
行ベクトル同士の内積も行列式の計算に帰着し、
行列Aのm行目の行ベクトルAmtと行列Qのp行目の行ベクトルQptとの内積について、以下の式が成り立ちます。
mt・Qpt=Δ・Emp
 この関係によって、以下の式が成り立ちます。
mttp=Δ・Emp
 (証明おわり)

【余因子行列の注意点】
余因子行列は、大学生も間違え易い、以下の問題点がありますので、ここで注意点を指摘しておきます。
余因子行列B=(余因子の行列Q)
Qの左上の添え字tは「転置行列」=行と列を入れ替えた行列、をあらわす記号です。
stst=Qts
1m=Qm1=εmpsp2s3
2p=Qp2=εmpsm1s3
3s=Qs3=εmpsm1p2



余因子tsは、もとの行列式よりも1つ次元の低い行列式で計算されています

【3次元ベクトルの外積】
この余因子の行列Qにおける列ベクトルQm1=εmpsp2s3は、列ベクトルAp2と列ベクトルAs3との張る平面に垂直なベクトルです。この列ベクトルQm1は、列ベクトルAp2と列ベクトルAs3との外積と呼ばれています。そしてその2つのベクトルが作る平行四辺形の面積の値の長さを持ちます。
(ベクトルの外積の応用:三角錐の底面を構成する2つのベクトルの外積をベクトルQとします。そのベクトルQの長さを1にした単位ベクトルと三角錐の頂点の位置のベクトルGとの内積は、その三角錐の頂点の底面に対する高さです)

 そして、この余因子の行列Qには、その列ベクトルと、行列Aの列ベクトルの内積を計算すると、
行の番号同士が一致すれば、内積の結果がΔになり、行の番号が一致しなければ、内積が0になるという大切な性質があります。
t1・Qt1=At1・εtpsp2s3=εtpst1p2s3=Δ
t2・Qt1=At2・εtpsp2s3=εtpst2p2s3=0
t3・Qt1=At3・εtpsp2s3=εtpst3p2s3=0

すなわち、この各ベクトル同士の内積の結果を行列の形にまとめると、
tp・Qtm=ΔEpm
という関係があります。

行ベクトル同士の内積でも同じ関係があります。
pt・Qmt=ΔEpm


(At1・Qt1=Δという関係がある理由)
t1は、行列Aの行列式の各項から、At1に掛かる係数を集めて、その係数の和を求めた結果だからです。
その各係数Qt1毎に各At1を掛け合わせて、全てのtの場合についての和を取れば行列式の値そのものを計算する式に戻ります。

(At2・Qt1=0という関係がある理由)
 また、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせれば、それは、行列式の計算において、At1の列ベクトルの位置にAt2の列ベクトルを置いて行列式を計算することに等しくなります。
 行列式の計算では、2つの列ベクトルが等しければ、その行列式は0になります。
そのため、At1に掛かる係数Qt1にAt2を掛け合わせるということを行なうと、t2の列ベクトルが2行ある行列の行列式を計算することに等しくなり、その計算結果は、
t2・Qt1=0
になります。

(余因子行列stが余因子の行列tsの行と列を入れ替えた理由)
 このように作られた列ベクトルで構成される行列tsを、行列の掛け算の計算規則の中で便利に使えるように、その行と列を入れ替えて定義したのが余因子行列stです。
行列の掛け算の計算規則では、ベクトルの内積は行ベクトルと列ベクトルの積であらわされるから列を行と入れ替えたのです。


【2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明】
2行2列の行列Ampの余因子行列Bstは、
11=A22
12=−A12
21=−A21
22=A11
でしたので、
mp+Bmp=(A11+A22)Emp
(要注意)この関係が成り立つのは2行2列の行列の場合だけに限ります。

両辺にAptを(右から)掛け算すると、
mppt+Bmppt=(A11+A22)Emppt
mppt+Δ・Emt=(A11+A22)Amt
 これは、2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理です。
この証明過程を覚えるとケイリー・ハミルトンの定理が覚え易くなると思います。


【ケイリー・ハミルトンの定理の(正規な)証明】
上記の証明は、偶然に証明ができたような証明であって、確実な礎がある解答ではなかった。そのため、以下では、問題の本質に正面から迫る方法でケイリー・ハミルトンの定理を証明する。

先ず、ケイリー・ハミルトンの定理は、行列式
Δ=det[Apt−xEpt]=0
の方程式のxを行列Aptに置き換え、係数項を単位行列Eptの係数倍に置き換えた式が成り立つという定理です。
この、「置き換え」がされる必然性が証明されなければ、ケイリー・ハミルトンの定理を証明したことにはならないと考える。

上の行列式の方程式は、
Δ=(A11−x) (A22−x)−A2112=0
ケイリー・ハミルトンの定理は、
(A11pt−Apt)(A22ts−Ats)−A2112ps=0・Eps
です。


これを証明するために、行列(Apt−xEpt)の余因子行列Bptを考える。この場合に、以下の式1が成り立つ。

 (Apt−xEpttsΔps   (式1)
この余因子行列Bptは、その要素である余因子が元の行列の要素の1次式により計算される。そのため、余因子行列は、変数xが高々1次である、xの多項式で展開した行列の和であらわせる。
すなわち、式2のようにxの1次の多項式で展開した行列の和であらわせる。
ts= xPts+Rts   (式2)
この余因子行列tsの式2を式1に代入する。
(Apt−xEpt)(xPts+Rts)=Δps  (式3)
ここで、Δは、
Δ=(A11−x)(A22−x)−A2112 
=x(A11+A22)x+(A1122−A2112) (式4)
この式4を式3に代入した下式がxの恒等式になる条件を求める。
(Apt−xEpt)(xPts+Rts)=(x−(A11+A22)x+(A1122−A2112))Eps
上式の左右の辺で、xの2乗の項と1乗の項と係数項とが、各々等しい条件を求める。
(xの2乗の項) −Ppsps  (式5)
(xの1乗の項) psptts=−(A11+A22ps (式6)
(係数項)  ptts(A1122−A2112ps  (式7)
A×{(A×式5)+式6}+式7を計算する。
すると、その式の左辺は0行列になり、
右辺は、行列式Δ
(1)xの2乗の項の係数にAの2乗を掛け算し、 
(2)xの1乗の項の係数にAを掛け算し、
(3)係数項は単位行列を掛けて、
それらの行列の項の和になります。
すなわち、
Δ=det[Apt−xEpt]=0
の方程式のxを行列Aptに置き換え、係数項を単位行列Eptの係数倍に置き換えた形の式になり、その式は、ptts−(A11+A22)Aps+(A1122−A2112)Eps=0ps
になります。
(証明おわり)

このケイリー・ハミルトンの定理は、回転行列Apt場合には以下の式になります。
 
【n行n列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明のページへリンク】



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南海先生による、n行n列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理の証明
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2012年01月28日(Sat)▲ページの先頭へ
ケイリー・ハミルトンの定理の数学的意味


大学への数学V&Cの勉強
行列と連立1次方程式

ケイリー・ハミルトンの定理は高校の数VCで教えられています。
しかし、高校生には、この定理の数学的意味が教えられていないので、
なぜこの定理を学ばなければならないのかが高校生にわからない状態です。

行列の教育の評判が悪いためか、2012年の高校入学生からは、新教育過程で、行列自体を高校生に教えないことになりました。

このページでは、このケイリー・ハミルトンの定理の数学的意味、すなわち、この定理を学ぶ価値がわかるように、以下で、この定理の意味を解説します。

以下の話は大学で教わる知識です。
そのため、以下の知識は高校の試験問題での解答には使わないで下さい。
(大学の入試問題の解答には使っても良いかもしれない)
高校の試験問題では、高校で習う範囲の知識を使って解答するようにして下さい。

先ず、ケイリー・ハミルトンの定理は、高校の数学VCで教えられているような2行2列の行列に限定された定理では無く、n行n列の正方行列に関する広い範囲の定理です。
 すなわち、ケイリー・ハミルトンの定理は、n行n列の行列Aptに関して、
Δ=det[Apt−xEpt]=0
の方程式のxを行列Aptに置き換え、係数項を単位行列Eptの係数倍に置き換えた式が成り立つという定理です。

【行列式】
ケイリー・ハミルトンの定理の意味を理解するには、先ず、「行列式」の意味を知る必要があります。

【行列の固有値と固有ベクトル】
 行列Amp毎に、その行列の変換により方向が変わらないベクトル(固有ベクトル)が必ず1つ以上あり、固有ベクトルの方向毎に特定の倍率α(固有値)でベクトルが拡大されます。
つまり、ある方向のベクトルに関して、
mp=αB   (式1)

という関係があります。
この固有ベクトルの方向は固有値毎に定まります。
固有値が異なる固有ベクトルは異なる方向を向きます。


この固有値αを計算するには、以下のようにします。
 Amp−αB=0
(Amp−α・Emp)B=0  (式2)
mpは単位行列です。
この行列 (Amp−α・Empの行列式が0になります。
また、その行列式が0ならば、以下で詳しく説明するように、式2を満たすベクトルが 存在します。
そのため、
mp−x・Emp
という行列の行列式を0にする方程式を求めます。その行列式の方程式の変数xの値(固有値)を求めることで行列Ampの固有値が計算できます。
Δ=det[Amp−xEmp]=0   (式3)


固有値αが求められたら、行列
mp−α・Emp
の余因子行列を計算します。
以下で詳しく説明するように、その余因子行列の縦の列ベクトルが固有ベクトルに比例します。

(注意) 一見固有ベクトルを持たないように見える回転変換の行列も、複素数の固有値を持ち、複素数の成分が含まれる固有ベクトルを持ちます。

【固有ベクトルの有用性について書いたページはここをクリック】


【行列の固有値と固有ベクトルの計算の詳細】

 行列Ampに関する固有値は、以下の行列の行列式を計算することで計算します。
mp−x・Emp
この行列が2行2列の行列の場合は、その行列式Δを0にする方程式(式3)は、以下のようにxの2次方程式になります。
Δ=det[Amp−xEmp]=0  (式3’)
0=εmp(Am1−xEm1)(Ap2−xEp2
=(A11−x)(A22−x)−A2112 ,
−(A11+A22)x+A1122−A2112=0  (式4)
このxの2次方程式の解は2つあります。
その2つの解をαとβとします。
(このαとβが固有値です。)
根と係数の関係から、
α+β=A11+A22     (式5)
α・β=A1122−A2112 (式6)
が成り立ちます。

この固有値λ(=α又はβ)を使った行列 (Amp−λ・Emp)の行列式Δは0です。
この行列 (Amp−λ・Emp)の余因子行列をpsとします。
すると、
(Amp−λ・Empps=Δ・Ems=0・Ems=0ms  (式7)
が成り立ちます。
行列psの1つの縦の列ベクトルp1については、
(Amp−λ・Empp1m1  (式8)

が成り立ちます。
この式8を変形すると、
mpp1−λ・Empp1m1
mpp1−λ・m1m1
mpp1=λ・m1

すなわち、列ベクトルBp1は固有ベクトルです。
よって、行列 (Amp−λ・Emp)の余因子行列psの列ベクトルp1は固有ベクトルです。
同様にして、余因子行列Bpsの列ベクトルBp2も同じ固有ベクトルです。これは、Bp1とBp2が比例することを意味します。

この固有ベクトルは、個々の固有値毎に、その固有値に関する余因子行列を計算し、その余因子行列の縦ベクトルに比例する固有ベクトルを求めます。

そうして求めた個々の固有値毎の固有ベクトルは、
固有値が異なれば異なる方向を向きます。
固有値が全て異なる場合の、固有値毎の固有ベクトルを列ベクトルにして並べて作った行列Pの行列式は0ではありません。


 【2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理】

 (2つのxの値が異なる場合、すなわちα≠βの場合)
 固有値毎に、
(1)
1つ目の固有値αに対応した固有ベクトルBに対して、
(ベクトルBは、(B, B)です。)

行列Ampによる変換結果は、

mp=αB
になります。

(2)
別の固有値βに対応した固有ベクトルCに対して、

行列Ampによる変換結果は、
mp=βC

になります。


そのため、
行列(Amp−α・Emp)に対して
(Amp−α・Emp)B=0
(Amp−α・Emp)C=(β−α)C
行列(Amp−β・Emp)に対して
(Amp−β・Emp)C=0
(Amp−β・Emp)B=(α−β)B
一方、任意のベクトルDは、
=b・B+c・C
とあらわせる。
すると、任意のベクトルDに対して、
(Anm−β・Enm)(Amp−α・Emp)D
=(Anm−β・Enm)(Amp−α・Emp)(b・B+c・C
=(Anm−β・Enm)c・(β−α)C
=0
この行列(Anm−β・Enm)(Amp−α・Emp)は、任意のベクトルDを0ベクトルに変換するので、0行列です。すなわち、
(Anm−β・Enm)(Amp−α・Emp)=0np
(この形の式は、因数分解した形のケイリー・ハミルトンの定理です。)


(重根の場合、すなわち、α=βとなる場合)
固有ベクトルBに対して、
(Amp−α・Emp)B=0  (式9)
になりますが、
行列(Amp−α・Emp)は、
任意のベクトルFを、以下のように、ベクトルBの定数倍に変換します。
(証明開始) 
行列(Amp−α・Emp)によるベクトルFの変換結果のベクトルは、以下の式10であらわせる。すなわち、
(1)ベクトルベクトルBと線形独立な場合は、ベクトルベクトルBを用いて、 
(Amp−α・Emp)F=g+hB  (式10)
とあらわせる。
(2)また、ベクトルがベクトルBと線形独立で無くベクトルBの定数倍の場合は、g=0、h=0とあらわせて、やはり式10であらわせる。

(仮定)ここで、g≠0と仮定すると、

式9により、
(Amp−α・Emp(h/g)B  (式11) 
式10と式11を足し合わせると、
(Amp−α・Emp)(F(h/g)B)=g+hB ,
mp(F(h/g)B)=(α+g)・(F(h/g)B
この式は、ベクトル(F(h/g)B)が行列mpにより(α+g)倍に変換されることをあらわしているので、
α+gが固有値であることになる。
一方、固有値は重根であって、αのみであるので、
g=0
になる。
しかし、g≠0と仮定していたので、これと矛盾する。
よって、g≠0とする仮定は不適。
∴ g=0
任意のベクトルFに関する式10は、
(Amp−α・Emp)FhB
(証明おわり)
このため、任意のベクトルFについて、
(Anm−α・Enm)(Amp−α・Emp)F=(Anm−α・Enm)(h・B
=0
すなわち、
(Anmα・Enm)(Amp−α・Emp)=0np


よって、α≠βの場合も、α=βの場合も、
(Anm−β・Enm)(Amp−α・Emp)=0np
nmmp−(α+β)Anp+α・βEnp=0np
根αとβと係数の関係をあらわす式5と式6を代入すると、
nmmp−(A11+A22)Anp+(A1122−A2112)Enp=0np

これが、2行2列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理です。

【3行3列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理】
2行2列の行列の場合と同様に、3行3列の行列についても、
変数xに関して以下の行列を作ります。
mp−x・Emp
そして、この行列の行列式を0にする変数xの値を求めます。
εmpr(Am1−xEm1)(Ap2−xEp2)(Ar3−xEr3)=0 (式12)

この方程式は3次方程式になります。その3つの解をαとβとγとすると、以下の式であらわせます。
(x−α)(x−β)(x−γ)=0   (式13)

一方、行列Ampに関しては、2行2列の行列と同様に、以下の関係が成り立ちます。
(Anm−γ・Enm)(Ams−β・Ems)(Asp−α・Esp)=0np
この式13を展開した式を求めるには、行列式12を展開した3次方程式を求めて、

その3次方程式の、
をAnmmsspに置き換え、
をAnmmpに置き換え、
xをAnpに置き換え、
係数項は単位行列Enpの係数倍に置き換える
ことで求めることができます。
これが3行3列の行列に関するケイリー・ハミルトンの定理です。

(蛇足)
試験問題として、ケイリー・ハミルトンの定理を用いて行列のべき乗の計算を簡略化する問題が頻繁に出題されています。

行列のべき乗があらわれる場合は、電流Iと電圧Vを変換する電子回路を重ねた場合に、その変換をあらわす行列が、個々の変換のべき乗になります。



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2012年01月24日(Tue)▲ページの先頭へ
行列の掛け算のやさしい覚え方


大学への数学V&Cの勉強 
行列と連立1次方程式

先ず、行列とは、ベクトルを変換する関数を表であらわし、その表の要素を一定の規則でベクトルの要素に掛け算して、変換結果のベクトルを計算するために作られた表のことです。
 

行列によるベクトルの変換は、以下のようにあらわせます。
 
行列の要素を添え字を使ってあらわし、その添え字を変数にして、
 mk=B’
と書きます。
こういうふうに書いて、添え字の変数kの名が、行列Aの要素の添え字とベクトルBの要素の添え字で同じ名にそろえた場合は、
その添え字kのあらゆる場合(この場合は1と2だけ)の和をあらわすものとします。
この変換は、以下のように行列を列ベクトルに分解してもあらわせます。
 mk=Am1+Am2
の通りです。

行列の掛け算(行列の積)のルールは、以下のように書くと覚えやすい。

行列の要素を添え字を使ってあらわし、その添え字を変数にして、
mkkp=Cmp
と書く。

こういうふうに書いて、添え字の変数kの名が、行列Aの要素の添え字と行列Bの要素の添え字で同じ名にそろえた場合は、
その添え字kのあらゆる場合(この場合は1と2だけ)の和をあらわすものとする。

計算結果の行列Cの要素の計算の具体的内容は上記の通りである。

このように行列の掛け算をあらわすと、行列の掛け算の規則がおぼえやすくなる。
このあらわし方は、アインシュタインが考えた方法です。
この式のあらわし方をアインシュタインの縮約記法と呼びます。
 

以下の行列の説明では、特に断らない限り、行列の掛け算をアインシュタインの縮約記法で記述します。

(別の覚え方)
上記の覚え方では行列の掛け算の定義を覚えにくいという人には、以下のような覚え方もあります。
行列は、ベクトルを変換した結果のベクトルを並べたものです。
そのため、以下のように変換されます。
 結局、
となる。

上のように書くと、きれいな式で一見覚え易いように見えます。
しかし、行列の要素に添え字を付ける方が、これより明確だと思います。
(1)先ずは、行列の要素をAmkとあらわせば、それが行列Aに属すかが明確に分かります。
(2)また、その要素の行列内の位置(m行目、k列目)も明確になるので
わかりやすい表現だと思います。

そのため、上の式の要素に添え字を付けて以下のようにあらわします。
行列Bに行列Aを掛け算した結果の行列の左側の縦の列ベクトルは、 行列Bの左側の縦の列ベクトルを行列Aで変換した結果のベクトルであり、
掛け算した結果の行列の右側の縦の列ベクトルは、 行列Bの右側の縦の列ベクトルを行列Aで変換した結果のベクトルです。

この式は、以下の式と同じです。
mp=Amkkp=Am11p+Am22p
この式は、更に以下の図であらわせます。
この図を見ると、元の行列の各要素が積の結果にどう影響するかが一目瞭然に分かると思います。
この計算のイメージは以下のようになります。
ちなみに、この行列の積のルールで計算した行列の積の順序を変えた場合、
mkkpとBmkkp の行列は必ずしも同じにはなりません。
後で学ぶことですが、この2つの積は、行列の固有値は同じです。

行列の掛け算の例を以下に示します。




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